【鉄道旅をしてみよう!】 金色に輝く豪華な観光列車「或る列車」で由布院へ

こんにちは、漫画家&文筆家の「やすこーん」です。

本格的な鉄道旅は難しそうだけど、「観光列車」には興味ある、という方は多いのではないでしょうか。観光列車は乗ること自体を目的とした列車。凝った外装や内装、食事が出てくるもの、車内で楽しいイベントがあるものなど、様々な工夫を凝らした列車が今や全国を走っています。

この記事を担当したみちくさの達人

  • 旅して描(書)く!漫画家&文筆家

    やすこーん

    駅弁・駅そば・温泉・お酒を楽しみながらの鉄道ひとり旅が好き。食べた駅弁の数は2500個以上。著書は「ひとりで楽しむ鉄道旅 駅弁めぐり篇」(玄光社)ほか。「旅行読売」で漫画「猫に駅弁」連載中。

    みちくさの
    達人
金色に輝く或る列車 (写真:坪内政美)
金色に輝く或る列車 (写真:坪内政美)

ところで観光列車には、ひとりでは乗れないのではないか、と思っていませんか? 実はたいていの観光列車はひとりでも乗れます。(たまに2人以上の設定の列車もあります)

私はまず寝台列車が好きになり鉄道ファンになりましたが、次に興味が湧いたのは観光列車でした。寝台列車が終焉を迎え、それと同時に全国で、趣向を凝らした観光列車というものが誕生しました。食べることが大好きな私が、食事付きの観光列車にハマらないわけがありません。

博多駅に停車中の或る列車
博多駅に停車中の或る列車

今回訪れたのは九州。九州の観光列車はすべてD&S(デザイン&ストーリー)列車と呼ばれていて、沿線の歴史(ストーリー)や凝った内装(デザイン)などを個性とした列車たちがたくさん走っています。その中でもかなり豪華な観光列車「或る列車」に乗って、九州を旅します。

さて、早朝に東京から飛行機に乗り、博多駅にやってきました。ここから「或る列車」が出発します。
或る列車は、運行開始してすぐの2015年10月に友人と乗車しました。実は「食事付き観光列車」に乗ったのは、「或る列車」が初めてでした。
今回はひとり旅。どんな旅になるのか、楽しみです。

みちくさの達人

或る列車の予約は、HPから簡単に行えます。観光列車が目的の旅は、まず観光列車の予約を押さえてから、ほかの交通手段の手配をしましょう。

1号車のテーブル席車両
1号車のテーブル席車両

博多駅ホームに或る列車が入ってきました。金色の列車は、この列車以外で見たことがありません。
車両は2両編成で、1号車がテーブル席車両、2号車が個室車両。1号車は、椅子やテーブルなどの調度品はもちろん、天井も床も細かな模様がびっしり。まるでヨーロッパの高級レストランのような内装に、「この列車は動く調度品だ」と溜め息が出ました。

2号車の個室車両
2号車の個室車両

私の席は、2号車の個室車両です。左右の窓側にそれぞれ2名掛けの個室(1名利用可)が配置され、1つだけ1名用の個室があります。トビラは組子細工で目隠しになっています。
そういえば初めて友人と乗った際も、個室車両でした。ひとりだと個室の方が周りの目を気にせず乗れていいかな、と思います。

水戸岡さんがデザインを手掛けた「ゆふいんの森Ⅲ世」(写真:坪内政美)
水戸岡さんがデザインを手掛けた「ゆふいんの森Ⅲ世」(写真:坪内政美)

この列車のデザインを手掛けたのはドーンデザインの水戸岡鋭治さん。水戸岡さんは、JR九州のほとんどの観光列車を担当しています。特徴のあるデザインを知っている方も多いのではないでしょうか。

ベルを鳴らして発車を知らせるクルー
ベルを鳴らして発車を知らせるクルー

さて、そろそろ列車が発車します。発車の際には、クルーの方がベルを鳴らしてお知らせしてくれます。
気品溢れる列車に、私も上品に立ち振舞せねば、と背筋がのびます。10年前に漫画で、「姫」になったような気分で或る列車に乗った、と描いたことがありますが、その時の気持ちを思い出しました。

個室の部屋
個室の部屋

組子のトビラを開けると、豪華な部屋が現れました。これらのファブリックも水戸岡さんがデザインしています。
席に着くと、ウェルカムドリンクにみかんジュースかスパークリングワイン、どちらがよいか聞かれます。テーブルにはメニュー表、器や食材の生産者についてのパンフレットがあるので、しばしそれを読みながら待ちました。

組子のデザイン
組子のデザイン

ちなみに組子は、このような留め金で留めておくこともできます。小物ひとつひとつが凝っていますね。組子は開けておいてもよいし、締めておいても大丈夫。お料理を持ってきてくれる際は、開けてサーブしてくれるので、気にせずリラックスして過ごしましょう。

みちくさの達人

席にとどまるのでなく、歩いて車内のあちらこちらのデザインを見て回らないともったいないですよ。

前菜とウェルカムドリンク
前菜とウェルカムドリンク

最初のドリンクが運ばれてきました。私はもちろんスパークリングワイン。或る列車のコース料理は春・夏・秋・冬で変わりますが、今回は冬のコースです。
コース料理を手掛けているのは、東京南青山にあるレストラン「NARISAWA」のオーナーシェフ、成澤由浩シェフ。或る列車運行当時から料理を担当されています。

ほどなくして登場した前菜は、「星降る夜、長崎県マグロと花野菜のサラダ、宮崎県キャビアとともに」というタイトル。かわいらしい星の形に抜かれた野菜たちと、その間で輝くキャビアがまるで星空のよう。食べてしまうのがもったいない……と思いつつ、いただきまーす!

気分が上がって自撮り
気分が上がって自撮り

お料理はコースなので、タイミングを見て運ばれてきます。飲み物は、自分でその都度声をかけたり、お料理が来たタイミングで頼みます。
飲み物は、お酒もソフトドリンクも、すべて料金に含まれているので、頼み放題です。もちろん飲める量だけにしましょう。

料理を準備中の厨房
料理を準備中の厨房

1号車側にある厨房では、次に出るお魚料理の準備をしていました。或る列車では、温かい料理も提供されます。
観光列車で温かい料理を、しかも陶器のお皿で出せるというのは、本当にすごいこと。車内には大きなキッチンがあるわけではないですし、揺れる車内で陶器のお皿を使うことの難しさ、想像できるでしょうか。外装や内装だけでなく、こういうところにも感心してしまいます。

「大分県竹田市のサフラン香る九州近海磯魚のブイヤベース」
「大分県竹田市のサフラン香る九州近海磯魚のブイヤベース」

次はお魚料理。それに合わせて、白ワインを頼みました。お皿の模様が、下に影となって映り、きれいです。
「ブイヤベースのソースは魚の内臓も使っています」、とクルーの方が教えてくれました。通常のレストランと同様、お料理は運んできた際に1つ1つ説明してくれます。このソース、濃厚なのに後味がさっぱりしていて、めちゃめちゃおいしかった!おかわりしたいくらいでした。

ワインを注ぐクルー
ワインを注ぐクルー

ワインをお願いすると、このようにその場でグラスに注いでもらえます。グラスにはある列車のマークが。お皿やカトラリーは、ひとつひとつが九州の生産者の手作りです。

みちくさの達人

見た目も味も楽しめる料理の数々。これぞ豪華観光列車の旅の醍醐味です。

田主丸駅
田主丸駅

さて、或る列車は途中の田主丸駅にしばし停車。みなさんここで降りて駅を散策します。こちらの駅は、かっぱの形のとても個性的な駅。表側からも、ホーム側からも、かっぱの顔になっています。
というのも、この土地には「かっぱ伝説」があるのです。町中には河童の像が至るところに設置されているとか。記念に駅で売られていた「かっぱラーメン」をお土産に買いました。

お肉料理「牛タンの柔らか煮込みと冬の根菜」
お肉料理「牛タンの柔らか煮込みと冬の根菜」

列車に戻るとお肉料理が運ばれてきました。丸くくり抜かれた色とりどりの野菜がきれい。そして牛タンは、とても柔らかくてスプーンでスッと切れました。なんと4時間も煮込んでいるそうです。
これはやはり赤ワインでしょう。ゆっくりと食べながら、飲みながら、この時間を味わいます。

映りこむ美しい廊下
映りこむ美しい廊下

デザートまでちょっと時間がありそうだったので、車内探検に出かけます。私が或る列車で一番好きなのが、この1号車の壁に映る景色。右側のステンドグラスと組子が、左側のピカピカの壁の曲面に映り込んでいます。本当に美しいですよね。通る度に写真を撮ってしまいます。

ステンドグラスは当時の或る列車でも使われていた
ステンドグラスは当時の或る列車でも使われていた

実はこの列車、明治39年に当時の九州鉄道がアメリカに発注したものの、活躍する機会が与えられなかった幻の豪華客車(通称「或る列車」)が元になっています。

後にその模型を「鉄道模型の神様」と言われた原信太郎さんが作成。原鉄道模型博物館でそれを見たJR九州の青柳俊彦会長が感銘を受け、水戸岡鋭治さんにデザイン・設計を依頼し、実際に作ったのが今の「或る列車」でした。

メインスイーツ
メインスイーツ

さて、デザートは「福岡県あまおういちごたっぷり、ふわふわリコッタパンケーキ」です。雪の形のパイと粉砂糖が雪景色を思わせます。いちごはあまく、パンケーキは甘さ控えめ。コーヒーと共にいただきました。

ミニスイーツのモンブラン、チョコレート最中、吊るし芋
ミニスイーツのモンブラン、チョコレート最中、吊るし芋

或る列車では、デザートの後にさらにミニスイーツが出てきます。そこでサプライズが。
なんと、誕生日を祝ってもらいました! 手書きのカードまで。これはびっくりです。

実は申込みの際、備考欄に、何か特別なお祝いなどがあるかを書く欄があります。そこに記念日などを書いておくと、こういうサービスをしてくれるようです。
私の場合は、特に何も書きませんでしたが、生年月日の記入欄を見て、お祝いしてくれたみたいです。誕生日は1週間前だったから、本当にうれしかったです。

由布院駅で足湯に入る
由布院駅で足湯に入る

名残を惜しみつつ、列車は終点の由布院駅に到着しました。約3時間の旅はこれで終了。姫気分だった魔法が解けていきます。ああ、楽しかった。

由布院駅には足湯があるので、駅の窓口で足湯券を買って入ります。足湯からは停まっている或る列車が見えました。しばし余韻に浸りました。(足湯は駅舎工事に伴い現在封鎖中。2026年冬頃オープン予定)

由布岳と湯の坪街道へ続く道
由布岳と湯の坪街道へ続く道

由布院駅のロッカーに荷物を置き、由布岳に向かって湯の坪街道を散策します。途中、「湯布院金賞コロッケ」を買食いしました。黒胡椒が効いていて、トロッとした食感のコロッケでした。ここ以外にも湯の坪街道は行列のできているお店がたくさんあり、特に台湾からの観光客で賑わっていました。

水鏡になった金鱗湖
水鏡になった金鱗湖

40分ほど歩いて金鱗湖に到着。よく晴れて風がなかったので、湖に空が映って水鏡となっていました。しばし見とれてボーっとしていたら、湖の上に少し霧がかかりました。
昔、冬の早朝に由布院の金鱗湖で、見事な朝霧を見たことがあります。金鱗湖は温泉が流れこんでいるため水温が高く、気温が低い日に温度差で霧が発生し、それが名所となっています。見られてラッキーでした。

さて、来た道を戻って、由布院の宿にチェックインします。明日は別府に向かいます。

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