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みちくさの達人
那須の四季が味わえる「森林ノ牧場」のジャージー牛乳

ひと口、口に含むとその甘く豊かな風味に思わず目を閉じ、飲み込むと意外にもキレが良く爽やかな余韻を残すのみ。こんなにおいしい牛乳があるとは。かわいい瓶に入った姿や、イラストのさりげなさもまた、素敵。
飲む人の心を虜にするこの牛乳を作っているのは、栃木県・那須町の「森林ノ牧場」。山合いの森に抱かれた放牧地では、斜面をせっせとジャージー牛が登り、木々の中で草を食む姿が間近に見られます。この牛から搾る乳はおいしいだけでなく、四季によって風味が変わるというからびっくり。生乳の味を大切に瓶に詰め、バターやスイーツなどの乳製品も展開している、こだわりの牧場をご紹介します。

牛乳瓶の紙蓋を開けると、クリーム状の層が浮いて見え、口に含むとこっくりとした濃厚感。そのクリームごと牛乳を飲むと甘く豊かな風味が満ちあふれます。そのままの味が続くかと思いきや、後味は意外とさっぱり。喉ごしもいいのでゴク、ゴク、と飲める感じです。普段飲む市販のパック牛乳とは味が全く違うことがはっきりとわかります。

おいしさの秘密は、国内では希少なジャージー牛を伸び伸びと放牧して育てている点にあります。搾乳量が少ないなどの理由から日本の乳牛の中では約0.6%しかいないジャージー牛ですが、その乳は乳脂肪や乳タンパク質が豊富で、味わい深く濃厚。その味や成分のもととなるのが、放牧した森の中で牛が食べる草です。
春の青草は栄養が高くビタミンも豊富で、それを食べた牛の乳は黄色味を帯び、甘味の強い良い香りに。夏は牛が水分を多く摂る分、ミルクもサラッとします。秋の草は繊維質で、乳もより濃厚に。冬は乾草など保存飼料を食べるので水分が少なく、白くて脂肪やタンパク質が多くなります。
自然豊かな那須の空気と水が育む草の成分に共鳴するごとく、四季で移ろう生乳の風味がそのまま瓶詰めされています。

写真はどちらも、牧場内で製造したバター。左は春から秋に絞った牛乳で作ったもので、かなり黄色味が濃く、香りも強め。右は冬場の牛乳で作ったもので色はほとんど白に近く、こっくりとした味わい。並べて比べると、季節によって違うことが一目でわかります。

牛乳の味や色に季節感があるのは、よく考えればごく自然なこと。しかし日頃市販の牛乳を飲むときに「春らしい甘味が出てきた」などと気づいたことがないため、放牧飼育をする単独の牧場の生乳で作ると四季によってこんなにも大きな違いが楽しめるのか、と新鮮で、大きな魅力に感じられます。

「森林ノ牧場」の牛乳のおいしさの秘密は他にも。生乳を63℃の低温で30分かけてゆっくり殺菌しているのもポイントです。手間と時間がかかる方法ですが、ジャージー乳本来のおいしくて季節感あふれる風味を高熱によって損なうことなく、搾りたてに近い味が保てます。
また、牛乳上部のクリーム層は「ノンホモジナイズ」の証。脂肪球を機械で小さく均質化(ホモジナイズ)していないため、時間が経つと大きな脂肪球が浮上して互いにくっつき、クリーム状になるのです。軽く振ることでクリーム層と牛乳が混ざり、もとの状態になります。

牧場があるのは那須町北部。高速道路出口からも近く、訪れやすいロケーションです。
入り口近くにいる看板ヤギの「プリンス」は牧場のマスコット的存在。右手にはナチュラルな木造のカフェがあり、建ち並ぶ土壁のワークスペース小屋やピザ窯も緑の景観に馴染んでいます。
カフェの棚には牧場の全景を手描きした地図が。放牧地の見学に行く場合はこの地図を片手に、遊歩道や牧舎などの位置を確認しながら行くのがおすすめです。
放牧地入口で、サイズごとに用意してあるゴム長靴に履き替えたら、お手製の門を開けて中へと進みます。

中に入ると仔牛が人懐っこく顔を寄せてきたり、搾乳などを行う牛舎の中が見えたり。観光牧場ではないので柵なども丸太を組んだ自然な設えで、森の中で暮らす牛たちの世界に入り込んだような気分になります。
約8ヘクタールある牧場はコナラやクヌギ、クリなどの木々が茂り、なだらかなアップダウンもあちこちに。牛たちが牛舎と放牧地を行き来する道と並行して作られた遊歩道を上がっていくこと約450m、15分程度で最奥の放牧地に到着します。

身近に見るジャージー牛は、想像以上にワイルド。のんびり過ごしているというよりは、硬そうな草もおかまいなしに力強く食み続けており、たくましい生命力を感じます。しばらく見ていると、大きな黒い瞳とふと目が合うことも。そこは思わずにっこり笑い返したくなる愛らしさです。

他の大きな乳牛種に比べてジャージー牛は小柄なため、森林の中の下草を食べる放牧スタイルにはぴったり。起伏のある地形をものともせず、繁茂した草をきれいに食べてくれることで、木々の間の地表へ陽射しが届くようになり、小さな動植物の生態系に多様性が生まれるので森にとっても好結果に。このような形で森を元気にできるのは牛だからこそなせる業。さらにおいしいミルクももたらされるという、いいことだらけの循環がここで生まれています。

森を縫うように伸びる遊歩道は風通しが良く、清涼感でいっぱい。優しいブラウンのジャージー牛が放牧地に点々といる牧歌的な風景を楽しみながら、心癒される散策ができます。
道の途中にある小池で小さな生き物の観察をしたり、ロープで吊られたブランコに乗ったりして童心に帰るのも楽しい過ごし方。ネジを開け閉めして音を出すバードコールで、ヤマガラやコゲラなどの野鳥の声を聞ける可能性も。森に親しみ、自然の素晴らしさを満喫できる工夫が牧場内に散りばめられています。

「森林ノ牧場」の主、山川将弘さんは埼玉県出身。中学時代に北海道で搾乳体験をしたことがきっかけとなり、大学では畜産を学んだそうです。当時から「放牧の酪農」にこだわり、実現に向けて模索しましたが、効率や経営の観点からすればかなり険しい道。しかし山川さんは志を変えず、解決策として展開したのが、牛を放牧、世話をして、搾乳したら牛乳やバターを作り、カフェで販売までする方法でした。最近ではこうしたやり方は、1次産業×2次産業×3次産業を多角的に融合させて行うことから「6次産業」(1×2×3=6となるため)と呼ばれ注目を集めていますが、森林ノ牧場は早くからこの取り組みを行ってきたのです。

20頭いる牛はすべて、名前や個性も把握しているという山川さん。1頭1頭を両手でなでながら思いを語ってくれました。
「放牧地で牛が歩いている景色が、うちの牧場の一番の魅力だと思っています。都心から2時間位で来れるこの牧場で、気持ちのいい風景を眺めて動物に癒され、元気をためて帰ってもらえたら嬉しいですね」。

森林と牛が共生して互いに価値を高め合う、豊かな牧場。それを見て心満たされた観光客は、販売している乳製品にも価値を見出します。すると加工に携わる人の仕事が生まれ、人々が集まって地域も活性化し…という良い流れに。ないところに価値を生み出しながら循環させていく。山川さんのこのやり方は放牧経営の実現にとどまらず、訪れる人も働く人も皆を幸せにする、winwinのサイクルを作り出しています。

山川さんが作るこだわりの牛乳は、海外からも認められています。世界最高峰と評されるデンマークのレストラン「noma(ノーマ)」が、かつて日本でポップアップレストランを出店した際、「森林ノ牧場」の牛乳が食材の一つに選ばれました。同店のシェフは来日にあたり、最良の日本食材を選りすぐって独創的な料理を提供することを目標に掲げていたとのこと。「noma」のノルディックキュイジーヌに、那須生まれの牛乳がマイルドに溶け込み、特別な一皿へと昇華した様子は想像しただけでも心躍ります。

もちろん国内でも「森林ノ牧場」の乳製品は評判が高く、人気があります。「Café&Meal MUJI」とのスイーツコラボレーションや、バター作りによって出る無脂肪乳も活用するために那須の新銘菓「バターのいとこ」を製作するなど、新しい試みも枚挙にいとまがありません。
酪農家としてのみならず、資源や地方創生に対する山川さんのビジョンは次世代の指針ともなり、畜産を志す高校生や大学生向けの講演に招かれるなど、活動の幅がどんどん広がっています。

酪農王国・那須エリアのお土産として「森林ノ牧場」の乳製品は最適。特別なおいしさと素朴ながら洗練感のあるパッケージは自分用はもちろん、どなたに差し上げても喜ばれます。販売は全て牧場内のカフェカウンターで。保冷剤も購入できます。

「森林ノ牛乳」500ml 650円 90ml 各200円
「森林ノ牛乳」500ml 650円 90ml 各200円

季節ごとに風味が変わるので、四季折々に訪れて飲み比べてみても。紙蓋をキュッと開けたら、上層のクリームをそのまま楽しんでもよし、振って全体を混ぜて飲んでもよし、お好みで。500ml瓶はポッテリと愛嬌のあるシルエット。90mlは子どもの手でも持ちやすい飲み切りサイズ。乳脂肪分4.0%以上。

「発酵バター」100g  食塩不使用・有塩 各1,620円
「発酵バター」100g  食塩不使用・有塩 各1,620円

バター職人が伝統的な「バターチャーン」という機械を用いて作っているバター。ジャージー牛乳から分離した生クリームを乳酸菌で一晩かけて発酵させ、芳醇な香りとほどよい酸味を引き出しています。ワックスペーパーに包まれクラフトケースに入った様子はおしゃれなレトロ感があり、食通の方へのお土産にも喜ばれます。

(左から)「ヨーグルト」520ml 砂糖不使用・加糖 各750円 「キスミル」500ml 650円 「のむヨーグルト」500ml 650円
(左から)「ヨーグルト」520ml 砂糖不使用・加糖 各750円 「キスミル」500ml 650円 「のむヨーグルト」500ml 650円

ジャージー牛乳100%使用の「ヨーグルト」はまろやかですっきりした味。チューブタイプで食べる分だけ搾り出せるので便利です。「キスミル」は生乳から生まれた甘酸っぱい乳酸菌飲料。水やソーダ、お酒などで3~5倍に薄めて飲むのがおすすめです。忙しい朝にぴったりの「のむヨーグルト」は濃厚ながら爽やかな飲み心地。

「ジャージープレミアムカチョカバロチーズ」200g 1,500円
「ジャージープレミアムカチョカバロチーズ」200g 1,500円

箱を開けると緑の乾草の上に玉子…ではなく、コロンと丸いチーズが。季節によって変わる乳成分や品質に合わせ、チーズ職人が伝統的な製法で作っています。全体にしっとりした質感でくせがなく、そのままでもおつまみなどにぴったりですが、少し厚めにカットしてフライパンで軽く焼くと、香ばしくトロリと絶妙なおいしさが堪能できます。

「ミルクバー」200円
「ミルクバー」200円

牛乳はそのもので楽しむのはもちろん、食材としても優秀、という山川さん。アイスクリームやソフトクリームにもなり、身近なスイーツとして小さい子どもから大人まで楽しませてくれます。「ミルクバー」はまるで牛乳を食べているような濃厚なコク味。自然な甘さで真夏でもすっきりといただけます。

<カフェで牧場の恵みを「いただきます」>

「森林ノ牧場プレート」1,300円
「森林ノ牧場プレート」1,300円

放牧地の見学前後には、テラス席もあるカフェでのんびりと休憩を。ランチメニューではビーフシチューがメインの「森林ノ牧場プレート」や「ミートソースパスタ」を提供しています。乳牛の役目を終えた牛を、感謝の気持ちでおいしく「いただく」ことも大切なこと。ミートソースはお土産として購入することも可能です。

「ソフトクリーム」450円
「ソフトクリーム」450円

白くてきめ細かな舌触りのソフトクリーム。牧場を訪れたらぜひ食べて帰りたい一品です。実は山川さんもソフトクリームが大好きだとか。プレーン味の他、シーズンに合わせた「季節のソフトクリーム」や「ヨーグルトシェイク」も旅の途中のおやつにぴったりです。

森林ノ牧場
  • URLhttps://www.shinrinno.jp/
  • 住所栃木県那須郡那須町大字豊原乙627-114 MAP
  • アクセスJR新白河駅から車で約13分、または那須高原スマートI.Cから約12分
  • 営業時間10:00~16:00
  • 定休日木・金曜(祝日は営業)
  • TEL0287-77-1340
  • 駐車場無料

車で30分弱の距離にある「森林ノ牧場」と「リゾナーレ那須」。新鮮な牛乳やコラボレートして作った人気スイーツで、那須を訪れるゲストに豊かなおいしさをお届けしています。

ミルクの自然な甘さが引き立つ、ほんのり温かなホットでも提供しています
ミルクの自然な甘さが引き立つ、ほんのり温かなホットでも提供しています

「リゾナーレ那須」の朝食ビュッフェでひときわ目を引く「森林ノ牧場」の牛乳。牧場をイメージするディスプレイで、ブリキ缶に牛乳瓶がコロコロと入っている様子が絵になります。起きたての体にも優しい、ミニサイズの90mlなので、気軽に手に取りおいしさを味わえます。シリアルやラスクなど他メニューとの相性も抜群。
※日により提供内容が変更となる場合があります。

「ミルクジャム」200g  1,100円 。「リゾナーレ 八ヶ岳」「リゾナーレ 熱海」他、星野リゾートの施設にて販売
「ミルクジャム」200g 1,100円 。「リゾナーレ 八ヶ岳」「リゾナーレ 熱海」他、星野リゾートの施設にて販売

「森林ノ牧場」とコラボレートし、ジャージー牛乳から作った濃厚なミルクジャム。2020年のコロナ禍で牛乳のフードロスを防ぐことをきっかけに誕生しました。牛乳を焦がす直前までゆっくり煮詰めることで、甘すぎずキレのある味を実現。トーストやアイスクリーム、フルーツなどに好みでアレンジすれば食卓が豊かに。

「牧場を救う ミルクジャムフラッペ」990円。ツートンカラーの牛型クッキーとローズマリーがアクセント
「牧場を救う ミルクジャムフラッペ」990円。ツートンカラーの牛型クッキーとローズマリーがアクセント

「ミルクジャム」をふんだんに使った、贅沢感のあるオリジナルフラッペ。一口目から、濃厚なミルクジャムの香りとプリンの甘さで甘党の心をわしづかみにします。続いては紅茶とミルクの爽やかなコンビネーションで、飽きずにペロリと完食できます。リゾートにいながら牧場気分を楽しめて、写真映えもする可愛らしいスイーツ。

※掲載の内容は、記事公開時点のものです。変更される場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。