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SNS株式会社ファウンダー 堀江貴文 × 星野リゾート 星野佳路

進化する旅には、
冒険的な要素が必要

星野リゾートの代表・星野佳路が各界の好奇心あふれる人々と
“旅の効能”について語る対談シリーズ。
今回は、著書『ゼロ』がベストセラーになっている実業家・堀江貴文さんをお迎えし、
旅にまつわるテクノロジーや、日本の観光を活性化させるアイデアなど
想定外トークがどんどん飛び出します。

堀江貴文

1972年、福岡県生まれ。SNS株式会社ファウンダー。現在は自身が手掛けるロケットエンジン開発を中心に、スマホアプリ「テリヤキ」「焼肉部」「7gogo」のプロデュースを手掛けるなど幅広い活躍をみせる。ホリエモンドットコムでは『テクノロジーが世界を変える』をテーマに、各界のイノベーター達に堀江自らがインタビュワーとなり取材したものを連載中。同じく毎日更新のブログ、今話題のニュース集めたニュースキュレーションでもワクワクするような情報や独自の見解を発信中!

メールマガジン「堀江貴文のブログでは言えない話」の読者は1万6千人を越える。

ホリエモンドットコム

「進化する旅には冒険的な要素が必要」

星野

今日はお忙しいところ早朝から来ていただいて、ありがとうございます。

堀江

こちらこそ。星野さんの事業には興味がありまして。10年前くらいからすごい勢いで事業拡大されてますよね。

星野

91年に僕が社長に就任した時から、やっていることはあまり変わっていないんですよ。自社で宿泊施設の運営だけを担当すると決めたのは92年なんですが、その時、たまたま市場のニーズと合致したんです。つまり、運営はプロに任せたいという人が増えてきたんですね。今は、世界的に見てもそういう流れになっています。もう一つ、力がついてきた2001年頃に、不良債権の再生処理事業を請負いはじめたことも大きかったんだと思います。総じて、タイミングに恵まれました。 …堀江さんは街の設計とか、リゾートの開発とかにはご興味はありますか?

堀江

興味がないわけじゃないんですけど(笑)、やるべきことがいっぱいあるので...。

星野

いま、優先してることってなんなんですか?

堀江

それも、色々ですね...。 ただ、今はやりたいことと実際やっていることが乖離しています。今、僕は投資するお金は自分でまかなわなきゃいけない。だから、儲けるためだけの事業もやらざるを得ない。

星野

じゃあ、堀江さんが本当にやりたいこととは何なんでしょう。

堀江

今存在しているテクノロジー、あるいはその延長線上の技術で出来ることは、山ほどあるんですよ。 でも、技術以外のいろんな要因でできていないものが多い。基本的には、それを全部実現させたいです。たとえばインターネットが、ADSLの登場で、一気に普及したじゃないですか。イメージとしては、ああいうことをやりたいです。ロケット開発事業もそのひとつで。低価格で打ち上げられるロケットが今までできなかったのは、ロケット開発が国家主導だったせいなんですよ。国家って、最先端の技術を使った開発にしか投資をしない。今、日本のロケットって、年に3?4回しか打ち上げられてないんですけど、最先端の技術を使っているから、全部1点ものなんですよ。でも、宇宙に行くこと自体が目的であれば、50年前に開発された技術や部品を使っても行くことはできるはずなんです。僕はとにかく宇宙に行けさえすればいいので、汎用の部品を使った安いロケットを開発しているんです。

星野

なるほど。確かに、人類が月に行ったのってもう40年以上前ですからね。

堀江

そうなんですよ。ケネディ大統領が1961年に、10年以内に人間を月に送り込むと言って、実際、69年にアポロは月に行ってるんで。しかも、宇宙に出るだけだったら、もう少しだけ早いんですよ。ボストーク1号とか。

星野

ガガーリンですね。「地球は青かった」の。つまり、堀江さんにとっての宇宙って、旅行に行く感覚なんですか?

堀江

まあ、旅行というよりは冒険という感じですけど、冒険するためにも、まず宇宙に楽に行けるルートを確立しなきゃいけない。

星野

僕はそれも進化した旅の形だと思いますよ、旅が上級編になっていく重要な要素のひとつに、どこかに「危険かもしれない」というか冒険的要素がいると思っているので。

堀江

そうですね。ですから開発はもちろん、観光産業としても成り立たせなければいけないと思っています。宇宙ステーションとしての星のやをつくるというような…いかがですか(笑)。

星野

それはまだちょっと(笑)。

規制緩和とバッテリーの問題がクリアできれば、
リニア・カーも走る時代に

堀江

ロケット開発の他にも、実際に出来るかどうかはともかくとして、考えていることはあります。 …たとえば、浮いて走る車とか。

星野

ああ、リニアモーターカーと同じ原理ですね。

堀江

そうです。リニアモーターカーにはスピードが速いので、駆動用のリニアモーター用の地上設備が必要なんですけど、最高時速150kmくらいの車なら、それもいりません。地面に浮くということは、摩擦のエネルギーがなくなるということなので、すごく少ない労力で走ることができますし、走りながら給電もできるので、車に積むバッテリーの量も少なくて済みます。

星野

道路から給電できるようにするんですか。

堀江

はい。道路にコイルを埋め込めば、それはできますね。

星野

その技術って電車の稼働とかにうまく利用できないですかね。今、地方では、みんな電車を維持するのが大変なんですよ。

堀江

今は、みんなLRTになりつつありますけどね。でも、僕はもっとユニバーサルに考えていいと思ってます。例えばグーグルグラスみたいなデバイスを付けて、デバイス上で場所を指定すれば、そこまで自動運転で行けるような車で、しかも浮いて走る。そういう車はもうすぐ作れますよ。で、主要道路を走っているときは、電車のように給電システムに連結されて、走っていたりする。その他の道路では、充電された電気を使って走ってもいいわけですし。

星野

規制緩和と、残る問題は、バッテリーですね。

堀江

そこは発想を転換して、どこでも給電できるようにすればいいと言われているんです。給電するための技術はいくつかありますが、ひとつは電波で給電する方法です。昔の鉱石ラジオって、電池がなくても聞けましたよね。要は、ラジオの電波に乗った電流を使って、給電しているんです。その技術を応用すれば、電力供給に最適化した電波や光が出せるんですよ。例えば、この空間にそういった給電ステーションがあれば、特に何もしてなくてもスマートフォンが充電できたりするんです。

星野

そのような給電ステーションがあちこちにあれば、常に充電できるから、デバイスに積むバッテリーの量は少なくなりますね。

堀江

そういったような、僕達がSFで描いていたような近未来の風景が実現できるはずなのに、実現できないのはなぜか、ということを考えて、実現させたいんです。そういう意味では、実現できる環境はやっと整ってきつつあるんですよ。例えばJR東海が自己資金でリニアを作るという話もそうですし。やっとか!とは思いましたけどね。リニアなんて、僕が生まれる前から、宮崎で試されてたわけですから。

星野

山梨でも、ずいぶん前からテスト走行してましたよね。

堀江

あれも、リニア中央新幹線が将来できた時のことを想定して、始めたものですよね。だから、技術って実用化するまでが本当に長いんです。

リニアでどことどこを結ぶか。
アクセスの問題は物理的に解決できる

星野

テクノロジーの話とは外れるかもしれないですけど、リニアの件で言えば、僕は、東京~大阪間にリニアを作るのって、ちょっと疑問視してるんです。2つ理由があるんですけど、ひとつは、現在の東海道新幹線の速度に関しては、不満をもっている人があまりいないから。特に海外の人なんか、新幹線を見て、あれだけの分数で正確に早く動いてることに驚いているんですよ。不満を持たれてるのはむしろ価格なんです。でも、リニアになると、価格は更に上がってしまう。 もう一つは、リニアを通すべきルートが違うんじゃないかということです。東京~大阪間ではなく、成田~羽田間をリニアで結ぶべきじゃないか。成田~羽田間って、リニアだと10分くらいなんですよ。ロサンゼルス空港のターミナル移動よりも速いんです。つまり、成田と羽田を1つの空港として利用することができる。

堀江

それだったら、羽田の国際線を増やして、羽田中心にしちゃった方がいいと思いますけど。二空港をわざわざ結ばなくてもいいんじゃないでしょうか。結局、羽田の国際線強化を阻んでいるのは、成田を作った利権政治家のせいですよ。そもそも成田を作る必要もなかったんですよね。

星野

うーん、僕は、もし成田が24時間動いてるんだったら問題はかなり軽減すると思うんですよ。でも今はそうじゃないし、滑走路の本数が2本しかないというのも問題ですよね。 いずれにせよアクセスの問題は物理的に解決できるものです。

日本の祭りのポテンシャルを
世界に知らしめて観光に

星野

僕はやっぱり、ホテル運営のノウハウを持った会社がもっと活躍することが一番重要だと思います。つまり、不動産価値に頼る前に、ホテル運営に投資したほうが収益が上がるということを提案できる会社がたくさん現れてくると、日本の観光は変わってくると思いますね。僕らも、もっともっと頑張らなければいけないです。やっぱり、こうすればお客さんは来る、というビジョンを、日本の観光産業が示さないといけない。

堀江

それで言うと、僕、日本の観光が一つ取り組んだらいいと思うテーマを1つ見つけていて、それは「祭り」なんですよ。日本のお祭りってあまりにも海外に知られていない気がするんです。多分誰も知らないんですよ。でも、日本人が知っている世界の祭は結構あるんです。例えば、リオのカーニバルとか、バンコクのソンクランっていう水かけ祭りとか。そういうところには、世界中から観光客が訪れるわけですけど、例えば、徳島県の阿波踊りに外国人観光客がいるかっていうと全然いない。チームラボというアートとテクノロジーの会社に、猪子という社長がいるんですが、彼は徳島県出身で。彼が誘ってくれて僕も行ったんですけど、本当に凄くて。ものすごいポテンシャルを秘めてると思いました。 でも実際には、日本国内にすらあまり知られていなくて、徳島県人だけのものになっちゃっています。

星野

確かにそうですよね。青森のねぶた祭りには行ったことありますか?

堀江

まだ行ったことないですけど、今年行こうかなと思ってます。

星野

ぜひ来てください。星野リゾートには青森屋という旅館があって、そこはねぶた祭りをテーマにしているんですよ。普通に泊まっているだけでも、ねぶた祭りの気分をちょっと味わえますし、実際のねぶた祭の時は、席を用意して、ご飯を出して、お客様もすごく盛り上がるんです。あれは堀江さんのいう通り、ポテンシャルがあると思いますよ。世界の人たちはアッと驚くと思いますね。

堀江

「よさこい」って高知発祥なんですけど、実は、高知人のルサンチマンから生まれてるんですよね。特に、徳島県人に対して非常に強いコンプレックスを抱いている。そんなこと、徳島県人はまったく気にしてないんですけどね(笑)。 そんな高知人が作った祭りが阿波踊りに対抗した「よさこい」なんです。阿波踊りは、何百年もの歴史があるのに対し、「よさこい」はまだ60年位しか歴史がないらしいんです。ただ、新しいだけあって、よく考えられているんですよ。単純なリズムを覚えれば、あとはどんなアレンジをしてもいいような構造になっていて。それを見た北海道の学生が地元に帰って、「よさこいソーラン節」を作ったんです。そしたら一気に全国に広まりました。 ああいう感じのお祭って、僕すごい観光資源だなと思うんですけど、どうアピールするかってところまでは考えたんです。だから、それを星野リゾートさんにやっていただけたらなと(笑)。

星野

どうアピールするんですか?

堀江

ハリウッドで映画を作るんです。昔、ロスト・イン・トランスレーションって映画があって、舞台が東京なんですけど、この映画は当時(2003年ごろ)の東京のサブカルチャーを結構正確に捉えてるんです。でも、こういう、現代の日本文化をとらえた映画って中々ない。日本文化をフィーチャーした映画って、芸者だったり侍だったり、そういうものばかりですから。だから、お祭りを題材にした映画が作れればいいなと思うんです。例えば祭りの集中する7~8月に、誰か有名な俳優が日本に来て、阿波踊り、よさこい、ねぶた、祇園祭とか、日本全国の大きな祭りを全部体験するようなロードムービーを作るとか。

2週間祭りをやればもっと人が来る

星野

なるほど、いいですね。他に、ウチのホテルがある場所だと、竹富島の種取り祭というものがあるんですよ。11月から1ヶ月かけてやるお祭りで、街の人達が一晩掛けて芸をするんですよ。しかも、その準備にも1ヶ月もかけるんです。それを見てると、確かにものすごい熱量なんだけど、祭りに参加している人たちは、外の人に見てもらおうとはあんまり思ってないんですよね。阿波踊りをする徳島の人と同じように。それをプロモーションしていく上で、映画もいいとは思うんです。ただ、もう一つ、堀江さんの話を聞いていて思ったことがあって、それはもっと長い期間祭りをやってほしいということなんです。

堀江

何日くらいあればいいんですかね。

星野

2週間ですね。祭りの準備期間も含めて参加できたり、楽しめるようなやり方をかんがえることができれば、これぐらいの期間プロモーション出来るかもしれません。実は、これは地元の事業者のためでもあるんです。期間が長くないと、中々プロモーションの準備ができない。また、街のキャパシティを考えると、祭りが数日しかないのであれば、どれだけ入っても大した稼ぎにはならない。でも、2週間あれば、観光客も、日にちを分割して来るので、地元からすると、かなり長い間、お客さんが入っている状態になりますから。

堀江

祇園祭は割りと長いですよね。

星野

そうですね。だから、あの祭りには結構観光客も来てるとおもうんですよ。あれくらい期間が長ければ最高です。でも、今の祭りをちょっとだけ観光向けにアレンジするだけで、結構改善出来る部分はあるんじゃないかと思います。

堀江

なるほど…、でも上手くやれれば観光客の数が1桁変わりますよ。阿波踊りに参加する人数って、だいたい4~50万人ですけど、その10倍くらいのポテンシャルはあると思ってます。

星野

東京、京都、北海道、箱根以外に、もう1つくらいは有名な地方を作りたいですね。

堀江

1つと言わず、10箇所くらい作りましょう!

星野から堀江さんへのプレゼントは、彼が収監されていた刑務所のあった長野県須坂市のワイン。
しかも入所年のもので、称呼番号と同じ755というナンバー入り。
堀江さんは「実はテイクアンドギヴニーズの野尻くんも出所祝いにこれをくれたんです。
でも、ナンバーのタグまでつけてくださったのは星野さんが上手です」と苦笑い。

構成: 森 綾 撮影: 山口宏之

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