石川県の日本酒を楽しめる、おすすめの酒蔵8選(金沢・白山・小松・加賀)
美酒の宝庫とも言われる石川県。酒造りに適した厳しい寒さと清らかな雪解け水、おいしい米、そして高い技術を受け継ぐ杜氏(とうじ)と蔵人(くらびと)の職人魂によって、数多くの銘酒を生み出してきました。県が誇る蔵元を訪ね、気に入ったお酒を見つけるのはこの地ならではの旅の醍醐味。全国の日本酒ファンを魅了してやまない、おすすめの酒蔵をご紹介します。
<石川県のおすすめの酒蔵>
1やちや酒造
430年以上、加賀藩主に献上する酒を造ってきた由緒ある老舗
1583年(天正11年)、前田利家の酒を造るために尾張から金沢へ移ったのが始まりという、430年以上の歴史がある酒造。1628年(寛永5年)には「やちや」(当時は谷内屋)の屋号と、地名の「加賀」におめでたい鶴を合わせた「加賀鶴」という銘柄を三代藩主から拝受しました。
一番人気は加賀藩祖の名を冠した特別純米酒「前田利家公」。米の香りが優しい余韻として残る60%精米で、冷やでも燗(かん)でも楽しめる食中酒に適したお酒です。
250年以上前に建てられた土蔵造りの酒蔵を見学
酒造りに使う米は、15軒の地元契約農家が昼夜の寒暖差の激しい山手で作る良質な「五百万石」や「石川門」など。水は医王山(いおうぜん)水系の清らかな伏流水を使い、能登から出稼ぎに来る能登杜氏(とうじ)や蔵人(くらびと)集団によって酒造りが行われています。
文化庁の登録有形文化財に指定されている母屋の奥には、250年前に建てられた仕込み蔵などが迷路のように立ち並んでいます。「酒蔵見学」に申し込むと、酒造のスタッフの方による製造工程の説明とともに内部の様子を見学でき、酒の試飲も楽しめます。
- やちや酒造
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- http://www.yachiya-sake.co.jp/
- 石川県金沢市大樋町8-32 MAP
- JR金沢駅からタクシーで10分
- 9:00~12:00、13:00~16:00
- 日曜(月曜が祝日の場合は日曜営業、月曜休み)、年末年始
- 酒造見学500円(売店で酒購入の際に500円割引)
- 076-252-7077
- 無料
- 酒造見学 1日3回10:30~、13:30~、15:00~(各40分)開催。営業時間内に電話にて要事前予約
2鹿野(かの)酒造
芳醇な山廃(やまはい)仕込みをメインに、11品種もの酒がラインナップ
加賀温泉駅から東へ車で約8分、霊峰・白山を遠くに望む田園地域にある酒造。創業は1819年(文政2年)と古く、今の当主は七代目になります。造っている酒は金沢など北陸各地の酒屋や飲食店でもよく目にし、海鮮の味を引き立てると人気の「常きげん」。種類豊富な中でも蔵元と一部限定店舗のみ販売している秘蔵の酒が、大吟醸の「如」と「常」です。山廃仕込みの「如」は瓶詰めして5年間低温熟成させ、凝縮した旨みが魅力。「常」は速醸仕込みで果実味あふれるキレの良いのど越しが楽しめます。
まろやかな酒造りの命は、こんこんと湧き出る清らかな井戸水
「常きげん」の酒銘は四代目当主が豊作を祝う席上で「八重菊や 酒もほどよし 常きげん」と詠んだことに由来しています。
代々受け継がれ、大切に使っているのが、酒造すぐ近くに昔から湧き出る「白水の井戸」の水。白山から流れ来る口当たりのいい軟水で、風味豊かな酒造りに欠かせません。酒米は地元産の「山田錦」にこだわり、自社栽培も行っています。
酒造内の直販スペースでは、試飲可能なものの中から、グラス1杯100円でテイスティングもできます。
- 鹿野(かの)酒造
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- http://www.jokigen.co.jp/
- 石川県加賀市八日市町イ6 MAP
- JR加賀温泉駅から車で約6分
- JR加賀温泉駅から加賀温泉バス片山津温泉方面行き乗車約6分、「富塚」下車徒歩約9分
- 8:00~17:00
- 日曜、祝日
- 0761-74-1551
- 無料
3農口(のぐち)尚彦研究所
日本最高峰の名杜氏(とうじ)が魂で仕込む銘酒
「日本酒の神様」とも称される農口尚彦杜氏。16歳から修行を始め、「菊姫合資会社」や「鹿野酒造」の杜氏(とうじ)も長く務めた経歴の持ち主です。2006年には厚労省認定「現代の名工」にも輝きました。
そんな農口氏を杜氏として迎え、酒造りを後世に伝えるために小松市で2017年に立ち上げられたモダンな研究所。建物入り口の販売スペースではフルーティーでスッとキレの良い本醸造や、酒蔵近くの農家が栽培した米を使った純米酒、山廃仕込みの「YAMAHAI」シリーズ、繊細な味わいが芸術品にも例えられる「大吟醸」などを購入できます。
利き酒スペース「杜庵(とうあん)」で、日本酒の新たな魅力に開眼
小松市が茶道流派「裏千家」ゆかりの地であることにちなんで造られた、茶室と同じ4畳半の大きさのカウンターを持つ一室「杜庵」。ここでは完全予約制にて「酒事(しゅじ)」という利き酒コースが体験できます。凛とした空間で地元産の発酵食をつまみながら、農口氏渾身の酒を飲み比べて楽しめます。運が良ければここで農口杜氏に会えることもあるそうです。
「酒事」を予約した方に限り、農口杜氏の酒造り精神を垣間見られる展示や、最新設備が完備された酒蔵内部をガラス越しに見学することができるギャラリーに入場できます。
▶「農口尚彦研究所」の詳細記事はこちら
- 農口尚彦研究所
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- https://noguchi-naohiko.co.jp/
- 石川県小松市観音下町ワ1ー1 MAP
- JR小松駅より車で約30分
- 小松バス尾小屋行き乗車約40分、「観音下」下車すぐ
- 9:00~16:00
- 年末年始、お盆、杜庵は水・木曜
- 酒事5,400円、ドライバーの方のためのノンアルコールコース3,240円もあり
- 無料
- 酒事 1日1回14:15~15:45開催。12名定員。完全予約制(HPから会員登録必要)
4福光屋(ふくみつや)
日本酒本来の味わいを表現する「純米造り」にこだわる純米蔵
金沢市内にある、1625年(寛永2年)創業の酒蔵。何より大切にしているのは水と米、酒を醸す微生物などの自然の力。水は蔵の直下150mから湧き出る霊峰・白山の清らかな伏流水。酒米は兵庫県の農家と一緒に「山田錦」「フクノハナ」を、他「金紋錦」「五百万石」も各々栽培に適した地域で契約栽培しています。全ての酒は純米造りで醸し、米の旨みを存分に生かした「旨くて軽い」酒を実現。
1992年に誕生した「加賀鳶(とび)」は、江戸時代の大名火消しから付けたもの。辛口でキレの良さが魅力の酒です。
蔵見学や高級酒の試飲など、体験コースが充実
10月~4月には、蔵の中を巡って実際の純米造りの醸造過程を間近に見学し、試飲もできる「蔵内コース」を開催。酒蔵の歴史やこだわりを知ることもできます。また、5月~9月には酒造りの映像鑑賞と、数量限定で蔵出しする希少な長期熟成酒の試飲ができる「プレミアム テイスティングコース」もあります。他、気軽に人気銘柄を飲み比べできる「スタンダード テイスティングコース」は通年体験でき、好みや旅の予定に合わせて楽しめます。
- 福光屋(ふくみつや)
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- https://www.fukumitsuya.co.jp/
- 石川県金沢市石引2-8-3 MAP
- JR金沢駅東口から北鉄バス東部車庫行き他乗車約20分、「小立野」下車徒歩約1分
- 10:00~18:00
- 無休、年末年始は休み
- 蔵内コース1,000円、プレミアム テイスティングコース2,000円、スタンダード テイスティングコース 無料
- 076-223-1161(平日) 076-223-1117(土・日曜、祝日)
- 無料
- 体験の詳細はHPで要確認。
5車多(しゃた)酒造
熟練の職人が手間を惜しまず醸し出す、北陸の味覚に合う黄金色の酒
白山を望む水田の中に立つ酒蔵。創業は1823年(文政6年)、現在の主人は八代目になります。今も秋の終わりに能登から蔵人(くらびと)衆が出稼ぎに来て、能登流の酒造りを行います。ベースは昭和50年代に、能登杜氏(とうじ)四天王とも呼ばれた名杜氏・中三郎が築き上げた「天狗舞」流の山廃仕込み。強い酵素力の麹(こうじ)を用い、時間をかけて育てた山廃酛で造り込み、これをゆっくり熟成させるため、黄金色に輝く酒に仕上がります。「山廃仕込 純米酒」は蔵周辺の農家が作った「五百万石」を主に使用しています。
酒造りに適したミネラルを含む水に恵まれた蔵
酒造りに使う水は、白山からの伏流水を地下深い水脈から汲み上げたもの。鉄分はほとんどなく、酒造りにほど良いミネラルを含んでいます。
母屋入り口の直売スペースでは、蔵元と一部限定店舗でのみ販売している「五凛」シリーズの購入ができます。他に、酒造技術から生まれた新ブランド「shu re(シュレ)」も販売。「特別純米酒」の他、高い保湿成分をたっぷり含んだ「美容保湿クリーム」を展開しており、特に女性におすすめです。
- 車多(しゃた)酒造
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- http://www.tengumai.co.jp/
- 石川県白山市坊丸町60-1 MAP
- JR松任駅から車で約10分
- 9:00~17:00
- 日曜、祝日、土曜不定休
- 076-275-1165
- 無料
6吉田酒造店
恵まれた気候・風土を生かした、世界も注目の酒造り
良質の酒米と霊峰・白山の雪解け水に恵まれ、かつては「酒造りの村」とも呼ばれた豊穣な土地にある酒造。1870年(明治3年)に創業以来、継承され進化してきた山廃仕込みなどの酒から、前社長が遊び心で作り始めた古酒まで、味の幅広さも魅力です。
中庭に面した直売スペースでは、納得のいくまでいろいろなタイプを飲み比べできます。
蔵人(くらびと)を追った日米合作のドキュメンタリー映画「THE BIRTH OF SAKE」の舞台となった酒造で、直販スペース奥には撮影時の様子を展示したギャラリーがあり、見学も可能です。
地元農家と共に米を育て、自然の恩恵に目を向けた新ラインも人気
原点回帰を掲げ、地元農家と連携して米作りから取り組んだのが「吉田蔵」ライン。冷涼な気候と白山由来の豊かな水、その水で育った米、田を守る農家。恵まれた環境や人々の力を表現した「吉田蔵」はどれもフレッシュな味わいなのが特長です。「u」シリーズの名には「優しい」という意味も込められ、アルコール度が控えめで体にやさしく、口当たりもマイルド。どちらも蔵元と一部限定店舗のみで販売しています。酒の他、おちょこやグラスなどのオリジナルグッズもお土産におすすめです。
- 吉田酒造店
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- http://tedorigawa.com/
- 石川県白山市安吉町41 MAP
- JR松任駅から車で約10分
- 8:15~17:00
- 無休
- 076-276-3311
- 無料
7菊姫
旨みあふれる熟成酒を醸造し続ける高級酒メーカー
霊峰・白山の本宮「白山比咩(ひめ)神社」への参詣客で古から賑わいを見せた鶴来(つるぎ)街道沿いに、古き良き佇まいの酒造があります。全国清酒鑑評会で通算24回の金賞を受賞した実力蔵。量産をせず、1年、5年、物によっては10年と目を配りながらゆっくり熟成させています。
初めて飲む人へのおすすめは、北陸地区限定酒の「菊姫吟醸」。雑味のない透明感ある味わいで気取らず楽しめる一本です。純米酒「鶴乃里」は全国の菊姫会専売酒。山廃仕込みらしい酸味と旨みを堪能できます。
創業400年以上、時代に惑わされない芯のある酒造り
かつてこの地区が造る酒は「加賀の菊酒」と称賛され、豊臣秀吉が花見酒に取り寄せたともいわれています。酒造「菊姫」の創業もちょうどその頃の天正年間(1573~1592年)。原料となる酒米には強いこだわりを持ち、吟醸酒と純米酒には最高の酒米といわれる「山田錦」の中でも、特A指定地区である兵庫県三木市吉川町産の高品質米を使用。「酒マイスター」として理系出身者を登用するなど先進技術も積極的に取り入れつつ、世の流行り廃りに左右されない酒造りを続けている酒造です。
- 菊姫
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- https://www.kikuhime.co.jp/
- 石川県白山市鶴来新町タ8 MAP
- 北陸鉄道鶴来駅から徒歩約13分
- 8:00~17:00
- 無休
- 076-272-1234
- 無料
8松浦酒造
自然な風味の酵母で造った美酒「獅子の里」
山中温泉の中心地にあり、観光や湯巡り途中に訪れるにはぴったり。「獅子の里」の酒は全て純米仕込みで、仕込み水は高台にある「医王寺」境内から湧き出る超軟水を使っています。米種により秒単位で吸水時間を調整し、自然の風味を逃さない「泡あり酵母」を使用するなど、昔ながらの製法も取り入れた独自スタイルの酒造り。
新しい酒の魅力も開拓し、1997年からは微発泡の日本酒を製造しています。きめ細かな泡とみずみずしい香りで乾杯酒にもふさわしい「鮮」は、蔵元と一部限定店舗のみの販売です。
利き酒やソフトクリーム、甘酒も楽しめる広々した店内
創業は1772年(安永元年)。店舗は2004年に「造り酒屋」をイメージして作られました。「獅子の里」の様々な酒の購入ができ、「唎酒(ききざけ)処」では月替わりで、当主のおすすめの酒2種を200円で飲み比べできます。「冷やし甘酒」も通年販売しており、特に女性客から好評です。「お酒が飲めないお客様にも来てほしい」と、当主がフレンチシェフに教わって開発した「酒粕ソフトクリーム」は、熱処理をしたアルコールフリーのため、ドライバーや子どもも楽しめます。
- 松浦酒造
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- https://shishinosato.com/
- 石川県加賀市山中温泉本町2丁目 MAP
- JR加賀温泉駅から加賀温泉バス栢野(かやの)行き乗車約33分、「山中本町」下車徒歩約1分
- 9:00~18:00(1月1日~3日は時間短縮営業)
- 無休
- 0761-78-1125
- 無料