「動物園講座」をきっかけに動物や自然への関心が深まり、もっと知りたくなる  ~「OMO7旭川」×「旭川市旭山動物園」のコラボレーション実例~

星野リゾートは「その土地ならではの魅力を知り、体験すること」が旅の醍醐味だと考えています。旅先で実際に経験したことが原体験となり、地域の資源に対する愛着や守る意識が芽生え、持続可能なライフスタイルにむけた行動に繋がる。それは、旅がもたらす教育的効果であり、旅行産業の社会的意義だととらえています。

北海道旭川市にある「OMO7旭川」では、市内の人気動物園「旭川市旭山動物園」の協力を得ながら、大人も子どもも共に楽しみつつ動物や自然への理解・関心を高めてもらう取り組みを行っています。ホテル宿泊と動物園見学が旅の中でリンクし、たくさんの新しい発見に出合える環境教育へのアプローチをご紹介します。

#01

動物のありのままの姿を伝える「旭川市旭山動物園」

動物本来の優れた能力や感性を引き出す工夫を凝らした「行動展示」で有名な「旭川市旭山動物園」(以下、動物園)。「伝えるのは命の輝き」をテーマに、動物を実際に見て、触れて、体験できる場がたくさんあります。「もぐもぐタイム」をはじめ、小動物を抱っこできる「ふれあいの時間」、生態を知り尽くした飼育員さんによる手書きの看板など、大人も子どもも楽しめる動物の世界が広がります。 エゾタヌキ、キタキツネ、エゾシカ、エゾヒグマなど、地元の在来動物が多く見られるのも特徴のひとつ。近年は道内8つの動物園・水族館と協働し、持続可能な生物多様性の保全に向けた「北海道産いきもの保全プロジェクト」を推進中。野生生物がおかれた現状と私たちの暮らしとの関わりを学べる出張授業なども行っています。

#02

動物園の予習・復習気分で楽しむホテルサービス

動物園からバスで約30分の距離にあり、来園目的で宿泊するゲストも多い「OMO7旭川」。動物園にちなんだ様々なサービスを滞在中に楽しむことができます。ここからは特に人気が高い注目のサービスと設備をご紹介します。

◇子どもも大人もこぞって参加。「旭山動物園講座」ってどんなもの?

ゲストに動物園見学をより楽しんでほしいと、毎日20時からロビーで開講しているのが旭山動物園講座。動物園講座といっても、動物の話はしないのが特徴で、園の魅力をさまざまな角度からご紹介しています。ときにはひとつのテーマを深く掘り下げた内容を、期間限定で開催することも。例えば、動物たちの鼻だけにフォーカスした「お鼻見の話だけする」講座や「ペンギンの話しかしない」講座など。ガイドブックやインターネットにはない、おもしろみあふれる情報や知識が満載です。 夜の開講時間に集まるゲストは、ファミリー層から海外の方まで多様な顔ぶれ。参加型の場面もあるせいか、笑いあったり拍手を送ったり、和気あいあいとした雰囲気です。司会進行のスタッフは、動物園の飼育員さんからしっかりとレクチャーを受けていて見識豊富。ユーモアを交えながらの講座は、大人の知識欲も十分に満たされます。 総支配人の照井太陽氏いわく、講座で動物の話をするときには「かわいい」という面だけでなく、多少むずかしい話になったとしても生態系やその動物が抱える問題なども含めて、紹介するようにしているのだとか。講座を聞いた翌日に来園した方が、動物の動きや細かい部分までよく観察したり、園から帰って参加した講座で手書き看板の成り立ちに納得したり、来園前後に「予習・復習」することで園見学がより有意義になるような内容を目指しています。

◇動物の世界が広がる、大人気の「コンセプトルーム」

来園目的のゲストを中心に人気なのが、大好きな動物たちが部屋中にあふれ、ずっと一緒に過ごせるコンセプトルーム。このコンセプトルームも動物園の協力を得ています。園内で実際に掲示されていた動物紹介の看板が特別に移設され、動物園の雰囲気を感じられるのはコンセプトルームならでは。生態に詳しい飼育員さんが手書きした写真や説明文でびっしりと埋め尽くされた看板は、内容が濃くつい見入ってしまいます。園見学の予習・復習にもぴったりで、その動物に会うのが待ち遠しく、忘れられない思い出になります。   コンセプトルームは、白くてフカフカの雰囲気に満ちたシロクマルーム、躍動感あふれるペンギンに出合えるペンギンルーム、迫力と愛嬌を併せ持つえぞひぐまルームの3種類。「こんなところにも!」と驚くような場所にも動物たちが登場し、滞在を笑顔にしてくれます。

#03

目指すのは、たくさんの疑問を持ち帰れる動物園

上記のようなさまざまな取り組みに力を貸してくださっている「旭川市旭山動物園」。園長・田村哲也氏を訪ね、お話を伺いました。

「旭川市旭山動物園」園長の田村哲也氏。

「動物園に行く前夜、『OMO7旭川』の動物園講座を聞いてから行くのとそうでないのとでは、全く違うのではないかと思います。来園後の夜に振り返りとして講座に参加するのも、とても印象に残ると思いますし。旅の記憶で思い出すのは、そういう『深く知れた』という満足感なのではないでしょうか。 動物園は、自然を知る上での玄関口、というとらえ方をしています。人の社会と動物との間で、思いを馳せる場面作りをするのが役割だと。単に「かわいいね」というのではなく、その動物が元々住んでいた土地が今どういう状況になっているのかなど、展示を見て知ったことをきっかけに、行動に変化を起こしてもらえたら。楽しみながら色々なことに気づき、保全という大切な部分につなげられるよう工夫をしています。 今はスマホで調べれば、答えがすぐにわかる時代です。そんな中でも、園に来たら疑問をいっぱい持ち帰ってほしいですね、特にお子さんは。いろいろ考え、帰って自分で調べる。そういうフィールドとして動物園を活用してもらいたいと思っています」。

#04

動物園とのコラボレーションはゲストの目にどう映っているのか

ゲストが宿泊後に寄せてくださったアンケートには、動物園講座に触れたお声がたくさんあります。(一部要約、意訳させていただいております) 「動物園講座を聞いた翌日に動物園に行きましたが、知識があって行くのとそうでないのとでは大きく違うなと実感しました」(40代・男性)、「夜の動物園講座は楽しく、翌日の動物園がとても有意義なものになりました」(40代・女性)、「ペンギンの講座を聞けたおかげで、ペンギンをいろんな視点で見ることができた」(20代・男性)など、講座での「予習」がより深い関心や理解につながったと思われるコメントが多く見られました。 ファミリーのゲストからは「講座に子どもは大喜びで学びもあり、楽しい思い出となったようです」(40代・女性)と嬉しい回答をいただき、「子ども心に戻ったようなワクワクした気持ちになれた」(20代・女性)と大人の方々も楽しみながら学んでくださっている姿が浮かび上がりました。

#05

自然への理解や保全の意識を高め、社会的価値を生み出すホテル滞在

動物と人が接する機会を持ち、自然への理解を深めることは今、とても大切なことです。ホテル宿泊と動物園見学をつなげる講座等の取り組みは、楽しい雰囲気の中で多くの学びや発見があり、子どもにとっても大人にとっても教育的な意義があると感じました。「講座に参加した後の園見学が有意義だった」というアンケート回答が見られたのも印象的。ゲストの自然への興味、関心の種まきをする「OMO7旭川」と動物園のタッグは、社会的価値を生む新たなモデルであり、持続可能なライフスタイルへ向けた行動へとつながっていくことでしょう。

PROFILE
川口貴子
編集&ライター
大手出版社の女性誌で10年間、編集を経験した後フリーに。旅やインテリア、雑貨のテーマを中心に雑誌やwebで記事を書く日々。夫とのスポーツ観戦や、温泉旅に出かけるのが何よりの楽しみ。
施設のご紹介
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OMO7旭川
北海道旭川市6条通9丁目

富良野や美瑛にも好アクセスな拠点都市「旭川」。見どころ満載の旭山動物園やご当地グルメのハシゴで出会う旬の美味など、訪れるたびに街の個性に魅了されます。北海道の風土と、この地に伝わる新旧カルチャーを、思いの限り遊び尽くす都市観光のためのホテルです。

#教育
旅に学びの要素が加わることは、旅の充実度を高めるだけでなく、旅行者の日常をより豊かに、そしてサステナブルなものにすると考えています。なぜなら、学びをつうじて旅行者が地域に関心をもつことで、自然環境や文化への理解が深まり、次世代への継承へと意識が向くからです。学びある旅は、これからの観光を考えるうえで、いっそう重要になると捉えています。