国内外に45施設を運営する星野リゾート(長野県軽井沢町/代表 星野佳路)は、新型コロナウイルスの影響が観光業界に及び、不安視される中、長期化するWithコロナ期における旅のあり方として、「マイクロツーリズム」を提案しています。遠方や海外をイメージすることが多い「旅」を、地元に目を向けて楽しむ「マイクロツーリズム」は感染拡大を防止しながら地域経済を両立する、新たな旅のあり方の1つになると考えています。 星野リゾートにおける「マイクロツーリズム」の取り組みと、実績を報告します。
Withコロナ期における観光のあり方の前提は、「観光が感染拡大に貢献しないこと」であり、地元や近場を旅して楽しむマイクロツーリズムは、長距離移動が発生しないこと、季節ごとに同じ場所に訪れても異なる体験価値を享受でき、リピート需要の可能性もあることから、今般のニーズに合った旅のあり方だと考えています。マイクロツーリズムを推進する上では、いつ、どこで感染者数の拡大が起きるか予測できない中では、全国一律で都道府県の移動を規制するのではなく、隣接する都道府県同士がそれぞれの感染状況を把握し、連携しながら、感染リスクが高く都道府県を跨いだ移動を規制する範囲と、移動しても感染リスクが低いエリアを“マイクロツーリズム商圏”として設定し、推進することが大事だと考えています。「マイクロツーリズム」は全国的にウイルスが拡散するリスクを軽減しながら観光需要を維持することができると考え、星野リゾートでは今後も各エリアで地元の方への滞在提案を進めてまいります。
星野リゾートが運営する各施設では、お祭りや伝統文化、雄大な自然や旬の食材を活かした料理など、それぞれの地域魅力に触れられる滞在提案を大切しています。例えば「北海道の原風景に戻す」という思いでスタートしたトマムのファーム計画や、京都の伝統を現代に継承する意匠が設えた星のや京都、そして温泉旅館ブランド「界」が全施設で展開する「ご当地部屋」や「ご当地楽」など、さまざまな地域魅力を反映する取り組みを実践しています。私たちはマイクロツーリズムを通じて、地域の方々に、改めて地域特性を発見し、愛着を持っていただけるような、そんな“馴染みの旅館”になることを目指し、さまざまな企画を提案してまいります。
星野リゾートでは、コロナ禍で課題を抱えている地域文化の作り手の方々の状況把握に努め、リゾート運営会社として貢献できる取り組みを着手しました。フードロス問題を抱える酪農家さんの牛乳を活用した「牧場を救うミルクジャム」の生産や、ねぶた祭り中止により制作している「ねぶた」の行き場に悩む製作者さんとの連携など、さまざまな地域で取り組みが動き出しています。私たちは地域で育まれた文化や生産活動を、地域の方々とのつながりを深めながら共に乗り越えたいと考えています。
星野リゾートが運営する各施設では、緊急事態宣言終了後の6月よりマイクロツーリズムの展開を始めました。コロナ禍における3密回避の徹底に加えて、これまでのサービス内容の見直しを行い、地元の方々に向けた滞在提案を設計し、提供しています。ここまでの実績を事例含めて取り組み事例を報告します。
京都・嵐山で運営する「星のや京都」は、これまで約半数がインバウンド顧客のご利用でした。“奥嵐山で京文化に触れる1日“をテーマに、マイクロツーリズムの展開を進めたところ、1割以下だった近畿エリアのお客様が3割となり、全体として稼働率約80%という実績となりました。
静岡県・浜松で運営する「界 遠州」では、茶畑やお茶風呂などさまざまな滞在シーンでお茶の魅力を提案した結果、約6割が中部エリアのお客様となり、全体として稼働率90%を超える実績となりました。リピート予定のお客様も多数お越しいただいています。
高度経済成長期、各地の温泉旅館やリゾートホテルは地元のお客様の宿泊が主流でした。温泉や自然散策、贅沢な料理や居心地のよい客室など、滞在を通して明日への活力を取り戻す、そんな保養目的での利用が一般的でした。コロナ禍において、人々の移動が制限され、急激な生活様式の変化で多くの方々が疲労を抱えています。地元の方に気軽にお越しいただき、上げ膳据え膳でゆっくり楽しむお食事や、思い思いに過ごす非日常のひとときなど、「小さな旅行」を楽しんでいただく機会となるをマイクロツーリズムとして推進してまいります。