モノも旅も「エコで持続可能」が
発想キーワード
Markus Freitag
FREITAGの創業者のひとり。FREITAGは、スイスのチューリッヒにあるバッグのブランド。バッグはトラックのタープ(幌)を再利用して、手作りされているため、雨にも強い耐久性とこの世に1つも同じ製品はないデザインが特徴だ。現在、カバンや財布などを含め、約90以上ものシリーズを生み出している。創業は兄Markusと弟Danielの兄弟で1993年に始まる。現在、欧州、アジア、北米を中心に457店舗を展開している。 公式サイト
星野
この度は、ようこそ「星のや東京」にお越しくださいました。お泊まりになった感想を聞かせていただけるとありがたいです。
マーカス
出店のこともあって日本には10回くらい来ていますが、日本旅館に泊まるのは今回が初めてだったのです。靴を脱いだり履いたりするだけでそこに滞在していることが再認識されるのがとても面白い。くつろげる快適な時間でした。
今回の対談場所は「星のや東京」の各階に設けられたお茶の間ラウンジで。お茶を飲みながら、自宅にいるような雰囲気で行われた。さっそくフライターグのコンセプトについて説明してくださるマーカスさん
星野
日本旅館の大切な要素は保ちつつ、多くの部分に改良を取り入れ、現代の旅人が心地よく宿泊できるようにしました。私は伝統的な日本旅館に生まれ育ちましたので、その良さを広めたいと思っています。でも、多くの経営者が昔ながらのやり方に固執しすぎて、旅行者は旅館よりも西洋式ホテルを使うようになってしまいました。旅館の数は年々減っています。私たちは旅館に変化を加え、現代の旅行者が心地よく過ごせるように進化させたと思っています。
マーカス
すごく良いですね。人々が求めるコンセプトそのものだと思います。ヨーロッパから日本へ、あるいは東京に来て、良い旅館が見付からずにホテルしかないと、なんだか欠落しているような気がするので。
星野
ありがとうございます。私たちは「旅館」を新しいホテルのカテゴリーと位置づけ、そして、「旅館」が日本以外でも人気になればいいなと思っているんです。
マーカス
私はホテルが大好きです。未来のビジネスだと思っています。私には持ち家はないのですが、良いホテルで時間を過ごすのが好きで、それが効率的だと考えています。スイスの人々は別荘を欲しがりますが、結局は誰も使わないので空き家が目立ちます。
星野
別荘は特定の時期にしか使わないですからね。
マーカス
そうなんです。所有するよりもシェアをすることが、リゾート利用の未来形だと私は以前から思っているんです。人々はやっと、その場所を所有しなくてもシェアして楽しめるということが理解できるようになってきたと思います。
星野
スイスではマンションにお住まいですか?
マーカス
はい。私は賃貸マンションに住んでいます。ぜひ遊びにいらしてください。チューリッヒの湖の隣にあり、とても美しい場所です。幸運にもその場所とめぐり合うことができました。買うほどのお金はありませんが、賃貸ならできます。幸せです。
星野
なるほど。興味深いですね。マーカスさんの生活のなかで旅はどれくらいの頻度ですか。
対談が行われた週末はFREITAG銀座店5周年記念のイベントが。店舗にはたくさんのファンが集まった。マーカスもファンとの交流を楽しんだ。
マーカス
私には家族がいます。外科医として働いている妻と、8歳と11歳の娘です。旅は年の1/3いや、1/4かな? 今回は家族が後から来て合流します。日本国内を旅して顧客にあったり、フライターグのファンと交流をする合間に家族と時間を過ごしたり、日本の文化をみたりします。素晴らしいガイドもいますので、楽しみです。
星野
国内はどちらに行かれるのですか?
マーカス
今回は大阪、京都、福岡、熊本ですね。熊本は大きな地震があったので、ファンのことも気がかりですし。初めて九州へ行くことにしました。
星野
日本での交通手段は電車ですか?
マーカス
今までFREITAGの店の候補地を探す時もそうでしたが、都市に限らず国を知るのには自転車で回るのが一番素敵な方法ですね。私の一番大好きな移動手段で、自動車の運転免許を持っていない私にとっては唯一の交通手段なんです。
星野
スイスでは運転免許はお持ちでしょう?
マーカス
車の免許は持っていません。
星野
運転免許をお持ちでない!?
マーカス
将来には運転手がいるかもしれないですが、今はいません(笑)。
星野
スイスではどんな風に移動されているんですか?
マーカス
スイスでは公共の移動手段がとても発達しているんですよ。電車やバスや小さな地下鉄があります。車を持ったことがないので、その利便性のメリットもデメリットもわからないんです。もちろん予定をちゃんと組まなくてはいけませんし、スキーに出かける時などには大型のスーツケースが4~5個になりますが、鉄道会社に預けられるので、とても便利です。それにスキー道具はレンタル出来ますし。電車に乗った瞬間から交通渋滞に巻き込まれることもなく、皆で一緒に座っておしゃべりを楽しんだり、食事を楽しんだり、寝たり、飲んだりとリラックスして移動ができます。特に弟と一緒に移動するときには、そういう移動時間に経営のミーティングをするんです。普段と環境が変わると、違った発想が出てくるのでとても良いです。仕事仲間と会議室でミーティングの為にテーブルを囲む時とは違いますね。
自然に優しいことこそが持続可能で未来を作るキーワードというのが共通の二人の考え。兄弟で経営基盤を作り上げていったことも共通している
星野
弟さんとの関係について、伺いたいですね。とても仲良く一緒に経営されているのですよね。私も星野リゾートで弟も一緒に仕事をしているので。
マーカス
家族経営なんですか。
星野
もともとは家族経営です。私は4世代目で、祖先が旅館業を創業してから102年になります。
マーカス
弟と私は二人兄弟で、歳は14ヶ月しか離れていません。仲は良いですね。星野さんのところはどうですか?
星野
仲は親密な方だと思いますよ。ずっと同じ学校に行き、スケートやスキーなど、同じスポーツを楽しんできましたね。
星野
FREITAGのコンセプトのアイデアはあなたから出たのですか? それとも弟さんからですか。
マーカス
アイデア自体は2人でピンポンのように出し合いました。弟は元々グラフィックデザイナーで、私は仕事でサンフランシスコに行く予定でした。ちょうど、アップル・マッキントッシュが始まっていた時代です。
私は、防水性が強いメッセンジャーバッグが欲しかったんです。当時スイスでは入手不可能だったので、どうしたら手に入るかいろいろ考えました。メッセンジャーバッグのあるニューヨークに買いに行こうかとか、輸入すればいいのではとか。
そんなとき、共同アパートのキッチンから大きな高速道路が見え、トラックが通るのが見えたんですよ。その時に思いついたんです。あのタープ(幌)は水に強いはずだ。そして古くなっていらなくなった時にはどうするのか。それをトラック会社に聞きに行こうっていう話し合いをしました。私はさっそく出かけまして、最初のトラックのタープを手に入れて帰宅したんです。それから弟との共同作業が始まりました。1993年のことです。
星野
では、最初はこのメッセンジャーバッグを売ろうというわけではなかったんですね。
マーカス
最初は2つのバッグからスタートしたんです。ひとつは自分用、もうひとつは弟用、それだけです。ところがバックをふたつ作るだけでも、ものすごく重労働でした。タープは汚れていたし、裁縫仕事がけっこう苛酷で……疲れてすぐに止めてしまいました。でも、トラックのタープは残っているし、友人たちから「私の分のバッグも作って」と言われ続け、しぶしぶ再開しました(笑)。でも、2人でやっていたのは良くて、私がこれで生計をたてている訳じゃないから作業をする気分になれなくても、弟が「この材料分だけはやってしまおう!」といった調子で、弟が頑張るというように。そうこうしているうちに、弟がサンフランシスコに行き、新しい何かを始めようとすると、今度は私が彼に「いやいや、注文が来ているし、もう少し待て」と言い、そんな調子で一緒に仕事をしていました。
星野
当初は大きなビジネスになるとは思っていなかったんですね。
マーカス
はい。当時、私はビジュアルコミュニケーションズを勉強する大学生でした。夜間や週末に出来る仕事があるといいなと思ってたんです。全くの素人考えでしたが、自分たちでバッグ作りをスタートして、ちょっと副収入ができればいいなと。
それが、トラックのタープを使用してバッグを作るのを思いついた時の考えでした。もうずっと弟と一緒だし、アイデアを捻出する時には一緒にするので、弟がアイデアをひらめいたら、私にはもっといいアイデアがあるよ、といった調子でお互いにチャレンジしあう、そういった関係です。
この日は星野もお気に入りのFREITAGのバッグを持参。対談のあとは滞在着に着替えて、2人で大手町を散策。かなり新しいスタイル。
星野
自分たち用のメッセンジャーバッグが欲しいという気持ちから始まり、その後トラックのタープを使用してのメッセンジャーバッグ作りを思いついたけど、それはハイウェイを眺めていたら思いついたってことですか。すごいな。たまたまそのアパートがハイウェイに面していたんですね。
マーカス
はい。うるさくて、臭くて、埃っぽかったですね。アパートの裏にハイウェイがあって、表には湖がありました。表は天国ですが、裏は地獄のように交通量があります。すごいコントラストがありましたね(笑)。
そこで僕たちは何かを変えたくて、トラックをバッグにしたくなったのかもしれませんね。子どもの頃から自然と環境について考えていました。私の叔母は、庭でキッチンの生ゴミをコンポスト(堆肥)にするということを子供の頃から教えてくれていました。生ゴミが肥料になって、またトマトが育つというサイクルを自然に知るようになっていたんですね。
星野
自然や環境に関心のある一家だったのですね。
マーカス
弟と私が学業のため、家を出る前に「将来、一緒になかなか旅もできなくなるかもしれないし、今まで見たことがないものを見せてあげたい」という親の考えで、インドへ家族旅行しました。インドの大都市であるカルカッタ、デリー、マドラスに行きましたが、スイス人の16歳の少年にはかなりのカルチャーショックでした。何が起きているかよくわからず、ただびっくりしました。何週間もインドを旅したのですが、どの都市でもあらゆるゴミを大勢の人々が集め、それをもとに何かを作っていました。その光景が、僕らのアイデアの原点なのかもしれません。だから我々のやっていることはアフリカやインドで作っている物のようなところも少しあり、それを世界で一番コストのかかるスイスでやっているのです。何かを探して、それをもとに何かを作る。その光景を見た経験が5年後にバッグのアイデアの元になったというのがとても重要なポイントです。「リサイクル」で物事を考え、さらにリサイクルするというのが今日までの我々を刺激し続けることなんです。
星野
私は、使用済みの素材、リサイクルされた素材を使用しているというFREITAGのコンセプトがとても素晴らしいと思いますし、好きです。ファンもそうなんだと思います。ファン全員がFREITAGの製品を使う事で環境及び素材のリサイクルに貢献しているという思いに喜びを感じるんでしょう。
マーカス
FREITAGが行っていることは、ひとつの例にすぎないと思いますが、世の中に「まずリサイクルから物事を考える」ということに対してインパクトを与えていると思います。バッグを製造し、販売をすることによって生計を立てるのが最終的なミッションです。でも、それだけではなく、この商品の奥にある精神と姿勢があります。とても素晴らしいクオリティのバッグを製造するグッチやルイ・ヴィトンなどのラグジュアリーブランドと比べると、FREITAGが発信するメッセージはまったく違う事はお分かりいただけると思います。
星野
そうですね。全然違う方向性ですよね。
ところで、トラックのタープを使用するのは御社が未だに唯一ですか。
マーカス
この企業規模ではそうですね。我々がタープ利用を始める前には、トラック会社は破棄したり、時々農家にあげていたようです。
星野
日本ではトラックのタープって見かけないですよね?日本ではハードトップのトラックですね。
マーカス
アメリカもそうですね。
星野
ヨーロッパではトラックには今もタープがかかっているんですか。それとも変化がおきていますか?
マーカス
まだあります。一時期タープのレイヤーの層の中にメタルを入れ始めた事もあったようです。最近は元に戻りました。ご想像の通り、この素材には限りがあります。
よって我々は分解可能な素材の生地に注目を置き、私が今、着用しているような洋服を作り始めました。次の段階として、そもそも自然に還りやすい素材を育てるということが、未来に向けて必要なことだと考え始めました。タープは限りある資源を元に作られています。原料は石油ですし。ただ、本当に耐久性がありますし、これをリサイクルして使用することはよいことだと思います。自然素材で洋服を作り始めたのは、このタープのバックと同様の耐久性や防水性を自然にやさしいものだけから作るのは本当に難しいからです。
星野
アパレル、洋服にも進出されているのですね。
マーカス
生地でバッグも作っています。でも現時点では、ほとんどアパレルですね。
星野
なるほど。
マーカス
コーティングのことがあるのです。防水の素材はあるのですが、まだまだ種類がありませんし、開発の初期段階です。素材にもう7年の歳月をかけていますが、やっと1年半前から商品を作り、商品の一部を市場に出していますが、まだまだタープから作るバッグが主力商品なのは事実ですね。
この日マーカス氏が着ていたシャツは「F-ABRIC」のもの。ボタンは金属性だが、簡単に取り外しができ、リサイクルしやすい仕様になっている。
星野
新しいマテリアルはなんといいますか。
マーカス
日本にもあると思うのですが、リネンや漂白したブナ材の繊維です。
星野
天然素材を自分で育てているんですね。
マーカス
1つはフランスのノルマンディ地方で作られるリネン生地です。同様の素材が日本にもあったと思いますが、とても素敵ですよね。もう1つは干し草を原料としたものです。これは伐採され、地面に置かれ、1年後に工場で加工します。化学繊維と綿は使用したくないのです。綿は地面から水分を摂りすぎ、土地の塩分を高くしてしまいます。
私たちの考えでは、リネン(亜麻)、ハンファ(麻)、モダール(ブナ材繊維)の3素材が地球に優しい素材であるとしています。我々の服はこの3つの素材を合わせて「F-ABRIC」と呼んでいます。
星野
工場も作ったのですか?
マーカス
昔から営業されていた工場です。我々は繊維のコンビネーションを作っただけで、逆に昔ながらのノウハウを工場のみなさんから伝授してもらっています。化学繊維と綿が登場して広まる前は、ヨーロッパ原産の繊維は、このようなものしかありませんでした。日本も同じだったのかも知れませんが。綿と化学繊維は、その他の繊維に比べると本当に安いですが、私たちはこのような昔ながらの地球に優しい繊維を取り戻したいと思っているのです。それが理由ですね。
星野
この生地のアイデアはとても面白いですね。
マーカス
私も大好きです。現実は厳しいですが、新しい試みに挑戦し、フレッシュであり続けることというのは厳しいことですからね。
星野
私がFREITAGの商品が好きな理由のひとつとして、使用済みのトラックのタープを利用していて、それがわかるということがあります。ユーズド品であるということが見えるということです。
マーカス
ユーズドには人が使っていた歴史がありますからね。
星野
でも、星野リゾートのスタッフの中には好きではないというものもいます。
マーカス
汚すぎるんですね(笑)。
星野
私がこれを使っていることに対して、会社の社長が持つのには適さないというんですよ(笑)。でも私はそういった人が使っていたと風合いや歴史が好きなんです。
マーカス
ユーズドを愛する感覚は、日本の「ワビサビ」の考えからきているということを教えてもらわなければ。
星野
そうなんですよ。私が好きな側面はそれで、それが汚いだけと思うのであれば、それはそれでいいのかとも思うのですよ。
FREITAGの使用済みタープから作られた製品は、傷やしわがあちこちにあり、それが味わいになっているし、同じ物がふたつとないのが特徴
マーカス
木と同様、年輪を重ねるたびによくなる、というのが一緒ですよね。
星野
だから私は、より使いこんだ風合いがある商品を選ぶ傾向がありますが、ファブリックの商品に関してはそれはないですよね?
マーカス
そうですね、馴染み始めると少々あるかもしれませんが、商品を買っていただいた時点では、ユーズドの風合いはないですね。
星野
FREITAGの商品のファンとしては、使い込んだ感じや今までのFREITAG製品と同調した何かを感じたいと思っています。ぜひ、その部分のアイデアを入れてほしいですね。
デザイン的にタープの部分を洋服の一部として取り入れることは出来ますか?
マーカス
はい、それは可能です。「E002 WEISZ」シリーズというバッグは、そのようなスタイルですね。ストラップはタープから出来ていて、バッグ本体はオーガニックの素材から出来ていて、分解可能です。分解可能であれば、FREITAGの商品としてよいと思っています。商品としてのライフサイクルが終わった時に分解できれば、それは私たちの考えをきちんと表現できている製品だと思っています。
これはあるドイツ人の博士の思想から来ています。彼は科学の博士だったのですが、彼は現在若いデザイナーにデザイン思想を教えていて、その考えは「ゆりかごからゆりかごまで」という名前がついています。「全ての塵となるものはオーガニックでならなくてはならない」という考え方です。修理できるものは全て修理して使われ、たとえば金属のように自然に有害だったとしたら、それはオーガニックなものと一緒に処理されてはならず、それをもとにリサイクルして新しいものが作られるべきだという考え方です。
星野
なるほど。ぜひ、トラックのタープがFREITAGの洋服のポケットなどにあしらわれているデザインを見たいですね。FREITAGのファンだったら、見た瞬間、この洋服には新しいコンセプトがあるとわかるし、元々の思想を理解してくれると思います。
マーカス
そうですね。私もそう思います。
星野
今のところ、洋服にはFREITAGのアイデンティティが一目で分かりやすくは見えません。今のままでは製品の情報を本気で探らないとわからないですよね。ユニクロの商品とは全く違いますが、マーケティング上は同じようなわかりやすいアイコンがないといけないと私は思います。
マーカス
私も同意です。それはもっと努力すべきですね。
星野
次回は、私の地元の軽井沢にご家族で訪問していただきたいですね。「星のや軽井沢」は、私が一番最初に着手したプロジェクトなんです。エネルギー自給率75%の施設なんですよ。
マーカス
ウェブサイトでみました。本当に素敵ですね。
星野
私の祖父の時代に敷地内の川を利用しての水力発電に成功をし、さらに地熱を利用して暖房や給湯のための熱を得る土台を作ることができました。寒い場所なので、冬季は暖房や給湯のためのエネルギーを膨大に必要とするのですが、それに成功しました。
マーカス
それは素晴らしいですね。未来の形です。
星野
このシステムは日本中どこでも取り入れる事が可能です。日本は地熱エネルギーに溢れています。地震も火山もたくさんあり、困る時もありますが、土の下にエネルギーが豊富にあるということですからね。
マーカス
それは素晴らしいですね。これはスイスにはまだありませんが、将来はあるかもしれませんね。
星野
1番の地熱エネルギー保有国はアイスランドですね。2番目は日本なので、もっとそれを利用すべきだと思います。システムそのものは、我々のお客様にも紹介していますので、ぜひ見に来てください。
マーカス
これを宿泊者やゲストに紹介するツアーがあるだけでも、世の中が変わっていくと思いますよ。
星野
ところで、FREITAGの商品について私にもうひとつアイデアがあります。私はFREITAGのノートを長年使っています。これはスイスで購入しました。あなたが使っておられるのと、多分同じシリーズの商品だと思います。このリフィルなんですが、この紙が日本ではとても高額なんですよ。店での正規品は5,000円です。私は150円のものを買って、このサイズに入るようにkinko'sに行って、自分で裁断しているんです。
マーカス
我々がお店に裁断機を用意して、好きな紙をもってきてもらい、来店してもらって、残りの紙はリサイクルすればいいですよね。
この情報はとても有意義な情報です、というのもステイショナリーコレクションをもっと成長させ、向上させたいので、これは再考したいですね。
マーカス
次回日本へ来たら、北のほうへ、冬に雪があるときに行きたいですね。
星野
そうですね!スキーをされるのですか?
マーカス
スノーボードが大好きなんです。1986年に始めて、本当に素晴らしいスポーツだと思います。職業にしたいくらいなのですが、そんなに上手じゃないんですよね。
星野
私は長野県で生まれ育っていて、冬は本当に寒い場所なので、冬に出来るスポーツといえばスキーかスノーボードくらいなんです。あとスケートですね。未だに年間60日を目標にスキーを楽しんでいます。社内のスキーツアーも主催して、従業員に参加してもらっています。2016年の2月には従業員8名と一緒にスイスのサンモリッツに行きましたよ。
ウィンタースポーツの話の盛り上がりから、星野リゾートを拠点にして日本を一周するという話に発展
マーカス
あちらにホテルを作ってくだされば。将来はヨーロッパに参入するのをお勧めします。
星野
ヨーロッパのスキーリゾートはとても素敵ですね。よく整備された小さな村に宿泊しました。とても可愛らしく、いいですね。
マーカス
私もサンモリッツがあるエンガディン地方に行くのが好きで、そこでクロスカントリーをします。サンモリッツでのクロスカントリーは何日間でもやっていられます。
星野
スノーボードとクロスカントリースキーを楽しんでいるのですね。ご家族の皆さんもスキーやスノーボードを楽しんでいるのですか?
マーカス
彼らはスパで時間を過ごすのも好きみたい(笑)。
星野
おぉ、では温泉がたくさんあるので、日本を旅行するのはピッタリです。日本のスキー場エリアにはたいてい温泉がありますから。
マーカス
スイスでは、ホテルにスパがあります。私が好きなホテルには素敵なハマムがあるんです。しかしながらそれは伝統的なスイスとは無関係ですよね。
星野
東北の北部に、ぜひあなたを連れて行きたいですね。本当に素晴らしい場所です。8~10メートルの積雪量があります。雪が豊富すぎて、冬季は閉鎖して、春を待ってオープンし、春スキーやスノーボードが楽しめる地域があるんです。
マーカス
昨日、スイス大使館とミーティングを行ったのですが、(小声で)「スイスより日本の方がいい雪があるんですが、誰にも言わないでくださいね」って職員の人に言われました(笑)。みんなスイスに行ってスキーをしようって思うみたいですけど、友達でも北海道に行った人がいます。私も来年行こうと思っています。
星野
その時は絶対お知らせください。素敵な場所にお連れしますよ。実際にその場所の情報はヨーロッパで広まっているようです。なぜならヨーロッパから大勢の人々が、冬季に日本へスキーをしに来ていますから。ドイツ人もオーストリア人も来ています。
マーカス
人々はいままで、日本でそんな良質な雪でスキーを楽しめるとは思わなかったでしょう。でも、若い世代は星野リゾートの施設をチェックすると思いますので、魅力あるスノースポーツをそこでのアクティビティとして書いてあるといいですね。
ところで、星野リゾートの全ての施設に滞在するとしたら、どれだけの時間がかかりますか?1か月?それとも2か月くらいですか?
星野
現在36施設ありますので、2泊ずつするとして、2か月以上かかりますね。
マーカス
2~3か月ですね。日本を本格的に探求したい人に、いいパッケージだと思うのですよね。全国の星野リゾートに泊まりながら、日本を旅する。その支払いが出来る人に限りますけれどね(笑)。
星野
そうですね。お客様にそういうご案内をつくるべきかもしれませんね。
日本での次の滞在を楽しみにしてくれているマーカス氏。次回は星野が北海道か東北に連れて行く予定。
マーカス
大・中・小のバージョンをつくって、日本中の星野リゾートを訪問するという。
星野
自力でそれをやっていらっしゃるお客様を数組みかけました。昨年、あるカップルは5つの施設を訪問してくださいました。ハネムーンで1施設10日ずつの滞在でしたね。
マーカス
良いホテルがあることを知ると、それをきっかけに周辺の地域を探求しますよね。ある意味、ホテルは道標になると思います。もし、それがなければ迷子になってしまいます。日本に行こうよって話がたとえあっても、とても広いですし、なかなかプランを作るのはたいへんです。友人からの多少の推薦はあるかもしれないですが、あなたのホテルは的確な場所にあり、日本を旅するのにはとてもよい道標になると思います。とても快適でいい気分にさせてくれますし。
星野
場所によってはひとつのホテルから次のホテルに移動をすることも楽しいかも知れません。運転でもいいですし、自転車もいいですね。今日はありがとうございました。次回はぜひ別の施設で。
マーカス
自転車もいいですけど、次の私の大きな目的は、星野リゾートの別のホテルでの宿泊ですね。どこに泊まるか考えるのが楽しみになりました。ありがとうございました。
構成: 森 綾 撮影: 萩庭桂太