茨城のソウルフード「スタミナラーメン」!県南から食べに行ける貴重な3店を巡る

こんにちは、ライターの辰井裕紀です。「強くてうまい!ローカル飲食チェーン(PHP研究所)」などの著書があるローカルフード好きで、知らない町へ行くと真っ先にまだ見ぬ飲食店や裏名物フードを探してしまいます。街角でひそかに息づく店舗数ひとケタの希少ローカルチェーンを見つけるとうれしくなることも。
そんな筆者が今回取り上げるのは、東京から近いながらも、注目すべきローカルフードやローカルチェーンが隠れている茨城県。ここでは1970年代から「スタミナラーメン」という食べ物が県央地方を中心に親しまれています。埼玉・奈良と並び「日本三大スタミナラーメン」と語られる、その味の扉を開きましょう。
茨城のスタミナラーメンとは?
茨城式のスタミナラーメンは、レバー、かぼちゃ、キャベツなどのたっぷりの具材をあんかけでまとめた、独特の甘辛さが楽しめるパワフルな一杯です。
鶏ガラベースのスープで汁ありのスタミナラーメン(通称「ホット」)と、汁なしバージョンの「スタミナ冷やし」の2種が愛されています。なお、スタミナ冷やしは1年中食べられます。

その茨城式スタミナラーメンは、半世紀ほどの歴史があります。
スタミナラーメンはJR勝田駅前のラーメン店「大進」オーナーがあんかけラーメンを発案し、当時の店長の長井順一さんが作り上げたのが始まり。その後、長井さんが店長を務めた「寅さんラーメン」が開業、昭和50年代に「スタミナラーメン」と名付けられた。長井さんは後に独立し、水戸市内に「スタミナラーメン松五郎」を開店。評判を呼んでスタミナラーメンが県内外に広まった。2016年10月26日付の茨城新聞
なお、どこを「原点」と取るかは諸説あるようです。
しかしこの茨城式のスタミナラーメンは、主にひたちなか市・水戸市あたりで食べられているもので、それ以外の提供店は少なくなっています。
そこで、今回は県南の中心地・土浦駅から車で行けることを基準に、「県南から行っても気軽に楽しめるスタミナラーメン」の店を探してみました。
【つくば市】スタミナラーメン神保
まずはつくば市にある「スタミナラーメン神保」へ。県南のスタミナラーメン提供店で最も人気を誇り、店主の体調不良により2024年に閉店した「がむしゃ」で働いていた神保宏太さんが、2025年5月にオープンしました。

ラーメンどころ山形出身の店主が作る「スタミナ」
神保さんはラーメンどころ山形県出身で、もともとラーメン店通いが日課でした。茨城での学生時代にスタミナラーメンにハマって、「がむしゃ」で働いた後に自分の店を開店するまでになったのです。

「スタミナ冷やし」と「スタミナホット」を提供しており、麺は並盛り1玉150グラムで、別料金で半玉ずつ3玉まで増やせます。
スタミナ冷やしは、まずベースの甘辛しょうゆ餡が食べやすくてコクがあり、とろみで渾然一体となった麺と野菜が口に吸い込まれてきます。

甘辛かつ甘ったるさがなく心地よい味わいです。コクを重視した味付けで、うまみが強く、重層的に感じられる一杯を目指しているそうで、その意図が伝わる味わい。
「もともとスタミナラーメンは、レバーなどの安い食材を使って、学生におなかいっぱい食べてもらうのがスタートのようでしたので、ボリュームがあっておいしいものを意識していますね。今は原価が高騰していて安くは出せないんですけど……」と、心苦しそうに語る神保さん。
そのスタミナラーメンを作る作業は重労働。「あんかけと野菜が入ったものを何人前も中華鍋で作るのでめちゃくちゃ重くて、腱鞘炎になりかけています」と、鍛え上げられた太い腕を見せてくれました。
野菜は約350グラム!
1人前で、人が一日に摂るべき350グラムほどの野菜をまるごと摂れるのもうれしい一杯。かぼちゃとにんじんとニラ、キャベツがたっぷりでレバーも入っています。
「野菜の彩りがきれいに映えるように意識しています。スタミナラーメンは、緑黄色がきれいでおいしく、食欲をそそるものだと思うので」とのことで、全て手切りで350グラムの1人前を切っています。

神保さんいわく、「『カット野菜』はカット後に時間が経って鮮度がなくなりますし、水分も抜けますから」と、あくまで野菜を店内で大きめに切ることにこだわります。
辛さは老若男女が食べやすい程度に調整しており、お子さんなど、辛みが苦手な方は一味唐辛子を抜くこともできます。一味唐辛子・からし・酢をお好みでかけることができ、神保さんは「からし」がオススメだとか。
甘すぎず、辛すぎず、スタミナラーメンの神髄である「甘辛」をどこまでも心地よく感じられる味わいでした。トロトロ感は強めで、キャベツも固くなく頃合いの柔らかさ。無我夢中で食べたら、一気になくなってしまいました。
逆にカボチャ抜きやレバー抜きもできるので、レバーが苦手な人も安心。
現在のメニューはスタミナラーメン神保さんのInstagramアカウントをチェックしてください。
嫌なことも忘れられて活力になる味に

つくば以南の「スタミナファン」を中心に愛される、スタミナラーメン神保。
「『待ってたよ』とか、『久しぶりに食べて感動した』とか。そう言ってくださる方がいてうれしいです。大事な事は引き継ぎつつもいろいろな事を試しながら、自分のお客様を増やしていきたいです」
そして神保さんはこうも語りました。
「嫌なことを忘れられて、次への活力になる味にしたいと思っています。そういうものでありたい」

- スタミナラーメン神保
-
〒300-3261 茨城県つくば市花畑3丁目12−8 パルネット大竹 MAP
土浦駅から車で25分
関東鉄道バス「土浦駅西口」~「吾妻住宅」に21分乗車、乗り換えて「つくばセンター(TXつくば駅)」~「防災科学技術研究所」に11分乗車、徒歩2分
11:30~14:00、18:00~20:00(夜は現在不定期営業)
日曜、月曜
無料
【笠間市】スタミナラーメン一伸
土浦から北に行った笠間市にあるのが、「スタミナラーメン一伸」です。こちらもスタミナラーメンの元祖と言われる「寅さんラーメン」の弟子だった方が営む我流食堂で腕を磨き、その味を引き継いでいます。

店長の岩井真司さんは、修行の末に2014年に我流食堂友部店としてのれん分けで独立し、2017年に500mほど離れた場所に移転しました。その際に店名を変え、「スタミナラーメン一伸」となったのです。

スタミナラーメンとスタミナ冷やしは我流食堂時代からの看板メニューで、両方合わせて1日100食ほどが売れ、暑い時期は冷やし、寒い時期はホットが出るようです。ここでは、ホットをいただきました。
これでもかとレバー大量!
「スタミナラーメン並 HOT」を注文すると、どんぶりから具材やスープがあふれんばかりの一杯が登場します。
岩井さんも「野菜とかレバーを多めに入れている」とのことで、麺は業者に一伸のスタミナラーメン専用麺として作ってもらったものです。

スタミナラーメンの王道であるレバー、柔らかく食べやすいにんじん・キャベツ・カボチャなどの野菜が多く載っています。とくにレバーが「これでもか」というほどに、スープの中にたっぷりと入っています。

レバーの臭みが「どうしてもイヤ」という人が多いので、一伸では徹底的に臭みを取り除いているそうで、たしかに臭みを感じずにすんなりと食べられました。
なお、レバーが苦手な方には、レバーを抜く代わりにキャベツやにんじんなどの他の具材を多めにするうれしいサービスがあります。
さらに、もっちりしている印象的なスタミナ餡を作る工程は難しく、我流食堂での修行時代、「ゆるくもなく硬くもなく、麺に絡むような餡」を作れるまでに1年以上かかったとか。
とくに難しいのは火の調整と片栗粉の量で、今もその時々の原材料や気候に合わせてのスタミナ餡の調整に余念がありません。
さらに、こだわっているのはスタミナ餡の甘辛さ。食べた瞬間は甘く、食べ進めるうちにだんだん辛くなるように、一味唐辛子での辛さの調整に気を配ります。
珍しい魚介スタミナに、スタミナ丼も?
我流食堂時代からの伝統で、トッピングに珍しく「ホルモン」があります。煮込んだホルモンをスタミナ餡にかけると、これがまた格別だそうですが、その背景にあるのは北関東のもつ文化で、笠間でもモツの煮込みなどが親しまれています。
さらに、魚介スープのスタミナラーメンは、茨城でも提供店が少なくレアな一杯です。スタミナラーメンに魚介の味が加わったイメージの味わいで、評判がよくこちらも人気だとか。タイをメインに据え、ホタテを隠し味に加えています。
また、スタミナ餡を丼で食べる珍しい「スタミナ丼」は、あごだしラーメンをセットにして出していて人気。上のスタミナの具だけでもテイクアウトしていて、家でもごはんの上にかけて楽しむ人が多いとか。

岩井さん曰く、「ひたちなかや水戸にお店が多いので、スタミナラーメンを出す店がない笠間で出したかった」とのことで、地元では待望の存在として愛され、ラーメンマニアたちも足を運びます。
高速のインターチェンジが近く、県南はおろか、栃木や千葉から車を飛ばしてくるお客さんもいるとか。女性客が40%ほどとかなり多く、一人でいらっしゃる女性客も多いそうです。

- スタミナラーメン一伸
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茨城県笠間市旭町404 MAP
土浦駅から車で38分
JR土浦駅から特急ときわで23分、「友部駅」下車、バス停「友部駅」から茨城交通バスで7分、下車後に徒歩5分
11:00 ~ 14:00 (L.O.13:50)17:30 ~ 20:00 (L.O.19:50)
水曜
0296-73-6311
無料
【小美玉市】珍来小美玉店
1928年創業で、日本のラーメンチェーン最古参の一つといわれる「珍来」。その小美玉店の創業は2016年です。ちなみに小美玉は珍来の創業者の出身地であり、グループとして歴史的な地でもあります。
実は珍来でも、この店だけでスタミナラーメンを出しているのです。

店主の古内努さんです。青森県八戸出身で、本店などで修行しつつ30数年珍来一筋に生きてきました。前に務めていた6号線沿いの茨城県石岡市の店舗が閉店し、珍来が所有する土地で独立しました。

茨城に店を出したことから、「茨城の土地柄で出るメニューを」と、2021年ごろから中華料理店でありながらスタミナラーメンを提供しています。
平日で約10食、土日だと20食ほど出て、人気グループに入る一品です。
型破りすぎるスタミナラーメン
珍来小美玉店では「スタミナらーめん」という表記で親しまれている一杯は、今まで見てきたスタミナラーメンとは、一線を画した見た目です。どこか町中華の五目ラーメンにも似た感じ。

珍来と言えば太麺のイメージがありますが、この店では2025年から「細麺」だけに絞っています。実は製麺所では他にも細麺、縮れ麺などいろいろな麺を作ってくれるそうで、細麺にしてから年配者のファンが増えたそうです。
珍来特有の玉子麺は、175gとボリュームたっぷりで、半麺にすると100円引きになるサービスも行っています。
さらに、普通のスタミナラーメンは一味唐辛子を入れますが、代わりに豆板醤など違う辛味を入れて独自色を出しており、結構な辛さです。
珍しく「タケノコ」と「豆板醤」を使う
スタミナラーメンといえばカボチャですが、店の他のメニューで使わないために外し、代わりに、その他のメニューにも汎用的に使える「タケノコ」を入れました。
そのほか、にんじん、ニラ、タマネギ、キャベツ、レバーが入る格好です。とくに大きめのレバーが印象的。餡には中華丼のタレを使い、にんにくや生姜、酒にでんぷんまで入れます。

今まで食べてきたスタミナラーメンで一番辛く、スタミナ独特の「甘辛」ではない中華由来の辛さで、異色の味わいです。細かく刻まれた野菜が入り、かぼちゃがないなど、「一般的なスタミナとは別物」としておいしい一杯でした。
ひたちなかから離れた小美玉でなぜスタミナラーメンを出そうと思ったかというと、「国道6号線沿いでいろいろなお客さんが来るから」とか。6号線はスタミナラーメンの本場であるひたちなかや水戸ともつながっているのもプラスです。

実は茨城県南から気軽に行けるスタミナラーメン提供店は少なく、しかも最近はつくば界隈で食べられるお店が減っているため、提供店を探すのに苦労しましたが、貴重な3店舗を巡れました。
本場といわれるひたちなか・水戸とは離れた地域ながら、こんなにもおいしくて個性豊かな一杯が楽しめます。あなただけがわかる魅力を味わいに、旅に出てみてください。
土浦駅直結!観光の拠点に最適なホテル「BEB5土浦」

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