#02
竹富島で暮らすということ。「星のや竹富島」スタッフからの島便り
星のや竹富島には石垣島などからの通勤の他、自ら希望して竹富島に住んでいるスタッフもいます。
島には東(アイノタ)、西(インノタ)、仲筋(ナージ)の3つの集落があり、星野リゾートの社員寮も各集落にある他、一軒家を借りるスタッフもいるそう。開業当初はわずかだった島在住のスタッフも年々増加。島で執り行われる祭事をはじめ集会や清掃など、島の様々な取り組みにも積極的に参加しています。
独自の文化が息づく竹富島での生活とは、どのようなものなのでしょうか?
島で暮らすスタッフに、日々の生活や島への思いをうかがいました。
◇企画 小山隼人さん
2016年に入社した小山さんは、自ら望んで星のや竹富島へ。以来、島の魅力を生かした様々な企画を担当。島の人々との連携、スタッフ間の連携の要である「プロジェクトチーム」の運営、また島特有の畑文化や農作物を継承する「畑プロジェクト」のリーダーとして活動しています。
「竹富島は町並みなど有形のものに目がいきやすいですが、それを残してきたのは無形の人の心。景色を楽しむだけでなく島の人々の精神に触れてほしいですし、そのような滞在を叶えます」と小山さん
東京出身で離島の環境に憧れていたという小山さん。2016年10月から1年ほど竹富島に住んだ後、結婚を機に石垣島に転居。2023年3月からは再び竹富島で暮らしています。
「島の伝統的な建築基準で建てられた一軒家に家族で住んでいます。島には不動産会社がありませんので、物件は知人のツテで紹介してもらいました。
日常生活では、集落の集会や清掃など様々な活動にも参加しています。出勤前の早朝、息子とコンドイ浜を散歩したりするのですが、ビーチが綺麗なのは島の方々がビーチクリーンを行っているからです。竹富島の自然環境や景観は島の方々が掃除や草取り、ごみの処理など一致協力して行っているからこそ維持されているということを、島に住んで実感するようになりました。私自身、島民として島の活動に携われることを誇りに思っています」
「畑プロジェクト」では星のや竹富島の一角にある畑で様々な伝統作物を栽培
島の農業に精通している前本隆一さんから指導を受ける小山さん
島の保育所の園児たちと一緒に在来品種の大豆「クモーマミ」の種まき
「畑プロジェクト」では星のや竹富島の一角にある畑で様々な伝統作物を栽培
島の農業に精通している前本隆一さんから指導を受ける小山さん
島の保育所の園児たちと一緒に在来品種の大豆「クモーマミ」の種まき
小山さんは2017年にスタートした「畑プロジェクト」をはじめ、数多くの企画を通じて島の人々との連携を図ってきました。携わった人々からは島での暮らしに必要なことだけでなく、人として生きる上で大事なことを教えてもらったそうで、これからはその恩返しをしていきたいと語ります。
島の畑文化を継承し、次世代へ託す「星のや竹富島」畑プロジェクトの今「竹富島独自の伝統や文化は、これまで島の人々によって守られ、受け継がれてきました。ですが人口の減少で、それらを維持することが難しくなってきています。特に若い世代の人口減少は竹富島に限らず日本全体が直面している問題であって、竹富島はその縮図だと感じます。
竹富島には高等学校がないため、小中併置校卒業後はほとんどが島から巣立っていきます。島を離れた子どもたちが帰ってきてくれるような土台づくり、島外の若い人たちが興味を持ってくれるような魅力づくりができれば。島とともに歩む「星のや竹富島」だからこそできる、島の未来に向けた取り組みを進めていきたいですね」
◇広報・サービスチーム 與那城日南楽さん
那覇市出身の與那城さんが観光業を目指したのは、高校時代の経験から。国際通りで観光客によく道を聞かれ、案内すると喜んでもらえたことから観光の仕事に興味を持ったといいます。大阪の大学で観光学を学び、2022年10月、星野リゾートに入社。星のや竹富島での勤務を希望し、同年12月から竹富島で生活しています。
與那城さんは竹富島に来てから、雨が好きになったそう。「島特有の建物の造りからか、雨音がゆっくりと響くような綺麗な音で、つい聞き入ってしまいます」
那覇市出身の與那城さんですが、離島での生活は思った以上にギャップがあったと言います。
「まず景観が沖縄本島とまったく異なります。言葉も方言が違うため最初はわかりませんでしたが、島の方々と接していくうちに理解できるようになりました」
約600年の歴史を誇る「種子取祭」では狂言や舞踊など様々な伝統芸能を奉納
與那城さんが島で暮らして一番心が動いたのが、島最大の祭り「種子取祭」でのこと。2023年の催行では来客に飲み物やお弁当などを振舞う給仕を務めたそう。
「島で暮らす私を島の方々が覚えてくださったからこそ、給仕を任せていただけたのだと思います。島の一員として認められたみたいでうれしかったですね」
祭事に参加したことで新しいつながりができたと語る與那城さん。島の人々との交流が、とても楽しいと言います。
「春分から梅雨入りまでの「うりずん」の季節に、島民だけが許されているアーサーやモズク採りに連れていっていただきました。他にも料理上手な方にジーマミ豆腐やさたくんこう(サーターアンダギー)を教わったりしています」
海へと延びる西桟橋。夕焼けに染まる空と海が織りなす光景は必見
島で一番好きな場所は、夕日の観賞スポットとして知られる西桟橋だそう。
「日没後のマジックアワーは空がピンクだったり紫だったりと、毎日見ていても飽きません。竹富島では赤い空が次第に暗さを増す様子を「アコークロー」と言うのですが、言葉にできない美しさです。
竹富島は星空保護区に認定されているほど、星がとても綺麗に見えるんです。夜、桟橋に寝転んで満天の星や天の川を見上げていると、自分が竹富島に住んでいることを実感します。この絶景は島民と島に泊まった方の特権ですね」
竹富島が大好きで、「異動してください」と言われない限りは島にいたいと笑う與那城さん。
「島には魅力的な方がたくさんいらっしゃいますので、ゲストの皆様にアクティビティなどを通じてご紹介したいですね。島の方々にもゲストの皆様にも『よかったな』と思っていただけるよう、これからも励んでいきたいです」
◇広報 倉持薫さん
海外への興味から大学時代は英語を専攻し、アメリカで仕事に就いていたという倉持さん。星野リゾートには2022年11月に入社。最初の勤務地が星のや竹富島で、2023年12月からは広報を担当しています。
倉持さんが島で好きな場所は2つ。「1つは夕方のコンドイ浜。波も穏やかで夕日が綺麗です。もう1つはミシャシミチ。朝は蝶が舞って、天国のような光景に出合えます」
倉持さんは、前述の與那城さんと同じ東集落の寮で生活しています。
「星野リゾートに入社したのは、地域の方々と関わり、その土地の魅力をゲストの皆様にお伝えするという仕事に惹かれたからです。沖縄の文化にも興味がありましたので、竹富島での勤務は期待が大きかったですね。島に来た頃は緊張もありましたが、今では地域の方が皆顔見知りという、これまでにない環境で暮らすのが楽しいです」
種子取祭に給仕で参加。中央は「竹富公民館」の館長(2023年当時)・新田長男さん、左が倉持さん、右が與那城さん
旧暦8月15日に催される「十五夜祭(ジングヤ)」に参加
「マンダラー祝い」は数え年で97歳を迎えた島民の長寿を祝う祭事。集落内をパレードし、島をあげて祝う
種子取祭に給仕で参加。中央は「竹富公民館」の館長(2023年当時)・新田長男さん、左が倉持さん、右が與那城さん
旧暦8月15日に催される「十五夜祭(ジングヤ)」に参加
「マンダラー祝い」は数え年で97歳を迎えた島民の長寿を祝う祭事。集落内をパレードし、島をあげて祝う
仕事でも日常生活においても、島の人々との交流を深めていった倉持さん。中でも給仕を任された2023年の種子取祭は忘れられない体験だったと言います。
「実際に島民として参加したことで、島における祭事の重要性をあらためて実感しました。ひとつの祭事を行うために何週間も前から準備や練習を重ね、当日も役割を分担して進めていきます。島の方々が一致協力する姿は、裏方として携わったからこそ知ることができました。
種子取祭の給仕は裏方とはいえ、お客様の前に出る仕事。島に住んで1年での給仕は大役ですので、少しは信頼していただけているのかもとうれしい反面、しっかりやり遂げねばと気持ちが引き締まりました。当日は八重山の伝統的な絣布の着物を着たのですが、とても動きやすくて無事に給仕を終えることができました」
倉持さんは日々ゲストと接する中で気づいたことがあるそう。
「島の暮らしを知りたいというお客様がたくさんいらっしゃいます。地元の方のおすすめを教えてほしいという声も多いですね。私が島に住んでいるからこそ分かることをお伝えすると、とても喜んでくださいます」
星のや竹富島の魅力、そして竹富島の魅力を広く伝えていきたいという倉持さん。得意分野の英語を生かした広報活動にも意欲的です。
「国内はもちろん海外へも、今以上に情報発信していきたいですね。世界の人々に『沖縄にすごいリゾートがある!』と認知していただけるよう、私ならではの広報活動を目指したいです」
◇サービスチーム(※取材時) 河合千尋さん
河合さんは星野リゾートが提唱する、観光事業者だけでなく地域コミュニティや旅行者も一体となり、それぞれがメリットを得ることを目指す「ステークホルダーツーリズム」に共感。2023年に新卒入社し、最初の勤務地が星のや竹富島でした。
「最終便が出た後のコンドイ浜は静かで、波の音や生き物の動く音が聞こえてきます。浜にいた子どもたちと鬼ごっこしたこともありますよ」と笑顔の河合さん
河合さんが竹富島に住み始めて一番印象的だったのは、島の人々と神様とのつながりの強さだそう。
「集落ごとに月例会があるのですが、まず全員で神様に二礼二拍手一礼してから始まります。祭事も月に1、2回執り行われますので、島の方々の神様への思いを日々感じますね。
初めは島の集まりに参加しても少し距離を感じましたが、今では気軽に声をかけていただけます。狭いコミュニティだからこそ生まれる温かさを実感しますね」
島の環境保全について学ぶ「ふれあいまいふなーツアー」では、海岸の漂着ごみなどを回収するビーチクリーンを実施
島に住んだことで、河合さんがゲストへのサービスにつながったと感じているのが、「ふれあいまいふなーツアー」。生活に欠かせない水をテーマに、竹富島の歴史や自然環境への理解を深めるアクティビティで、井戸巡りやビーチクリーンなども行います。
「島で暮らしているからこそわかることがたくさんあります。例えば、今日お休みの店が多いのは最近まで祭事があったからとか、集落が綺麗なのは半年に1回行われる「清掃点検」の後だからとか。島の背景をふまえて参加者の皆様にお伝えできるので、ツアーで語る引き出しには自信があります。
島での生活で気づいたこと、島の方々から学んだことを、今後もゲストの皆様へのサービスに生かしていきたいですね」
◇総支配人 磯部竜さん
磯部さんは2015年、星野リゾートに入社。「界 日光」、「界 鬼怒川」、「OMO5熊本」でキャリアを重ね、2023年12月、星のや竹富島の総支配人に着任しました。
島の景色を残したくてカメラを買ったという磯部さん。好きな場所は日帰りの観光客がいない夕方や朝のカイジ浜で、ブランコに乗って本を読むことも
磯部さんの星のや竹富島勤務は、船の遅延で荷物が届かないという離島ならではのハプニングからスタート。1週間石垣島に滞在した後、東の集落の寮で竹富島での生活が始まりました。
「島の住人として理解を深めて行くことが大事と、毎月行われる集落ごとの集会に参加しています。皆さんの発言や交流を肌身に感じて、島の方々によって受け継がれてきた伝統文化の濃密さ、そして祭事を軸とした時間の流れを実感するようになりました」
島に住んでいるからこそ、ゲストへのサービスに生かせる発見も多いと言います。
「ゲストの皆様が星のや竹富島に期待しているのは、島の方々が語る話や、島特有の文化を取り入れたアクティビティなど、島の魅力に触れられるコンテンツです。新しい企画を検討する際には、島で暮らしているからこそ発想できる、島の現状をふまえた提案を心がけています」
刻々と表情を変える夕暮れの美しさは、宿泊するからこそ出合える絶景
総支配人として日々取り組む磯部さんが、星のや竹富島の今後の課題として挙げたのが「連泊」。
「竹富島に訪れる観光客の多くは日帰りです。でも、美しい夕暮れや星空、朝の静かな風景は宿泊しないと見ることができません。連泊して暮らすように滞在することで旅の満足度が高まり、竹富島への理解も深まります。
そして連泊すれば、島での食事バリエーションを楽しむお客様もいらっしゃいます。それには島の方々のご協力は欠かせません。食事やアクティビティなど様々な場面での連携を図り、島の観光や経済にも貢献できる仕組みを考えていきたいと思います。
竹富島ならではの独自の観光経済の基盤を創り、持続させていくこと。島の魅力度を上げることで、ひいては島民の人口の維持にもつなげられるような試みを、今後もスタッフ全員でチャレンジしていきたいですね」