<第10回>温泉街リノベーション後に設置された外部評価委員会

1.「長門湯本温泉みらい振興評価委員会」とは

「長門湯本温泉みらい振興評価委員会」は、長門市役所で2020年6月から行われる外部評価委員会です。開催の目的は「公民で取り組む長門湯本温泉の観光まちづくりを検証し、その知見をまちのみらいに生かすため」。外部の有識者・専門家による委員7人(学識経験者、メディア、建築・空間デザイン、まちづくり・金融、ジャーナリスト、コミュニティデザイン、観光業)で構成されています。写真は2023年5月の第7回委員会。

条例に基づき年に2回実施し、毎回ライブ配信が行われます。長門市からは江原達也市長(写真)はじめ職員が、温泉街からはエリアマネジメントを担当する長門湯本温泉まち株式会社と、恩湯を運営する長門湯守株式会社が出席。評価の対象は入湯税嵩上げ分(第9回参照)を原資とした「長門湯本温泉みらい振興基金」の活用、エリアマネジメント事業や次年度計画案、公民連携による景観インフラの維持管理などです。

2.みんなで決めた「まちづくりのルール」を守る

評価委員会の設置や入湯税の嵩上げに尽力した田村富昭さんは、委員会の位置付けをこう説明します。「地域を永続的に動かしていくのは、そこに暮らす方々。入湯税の嵩上げは持続的な観光まちづくりの財源を確保することが目的であり、その使途が第三者によって評価されることで基金の透明性が担保されます」。田村さんは当時、経済産業省から長門市に出向して経済観光部理事(2018年7月〜2021年6月)を務めた方です。

「入湯税をご負担いただく利用者の満足度向上のためにも、全国の観光地に精通し、幅広い見方で温泉街の取り組みを評価できる外部の有識者・専門家が不可欠と考えました」と田村さんは話を続けます。「公と民と地域とで作り上げたまちづくりのルールを守りながら、地域で稼いで地域で運営していく。そのために、プロジェクトの熟知と厳しい視点でのチェック体制は必要」とも。

3.土地活用モデル大賞・最優秀賞(国土交通大臣賞)

温泉街再生に取り組む「長門湯本温泉みらいプロジェクト」は2022年10月、「第19回土地活用モデル大賞・最優秀賞(国土交通大臣賞)」を受賞。評価のポイントに河川活用、交通再編、夜間景観などの温泉街の面的整備のほかに、「第三者評価を得るための外部評価委員会の設置」もあがっています。

委員会では以前から「観光地経営のモニタリング」の議論もあり、目標までの達成度合いを明らかにするKPI(重要業績評価指標)設定の話が進みます。市とエリアマネジメント法人が連携する方向性を明確にして評価するためです。KPIでは単に観光客数ではなく、旅館の収益(RevPAR)や働く人の満足度まで確認するなど活気的で、これらを踏まえた評価体制が出来つつあります。写真は委員長を務める梅川智也さん(國學院大学・観光まちづくり学部教授)。

4.デザイン会議と推進会議からつながる評価委員会

長門湯本温泉観光まちづくり計画(2016年8月)後、公民の専門家チームが横断する委員会が何度も濃密に行われたことは地域の財産です。中でも「デザイン会議(写真)」「推進会議」は約3年で50回以上開催され、整備計画を着実に進める礎となりました。デザイン会議ではプロジェクト司令塔や建築・ランドスケープ・夜間照明・交通・観光・金融・情報発信の専門家人材と地元有志らが実務を検討し、推進会議ではその提案について市長はじめ地域の有力者や外部有識者らが決定を行う流れでした。

まちづくりとしては極めて短い3年、5年という時間で、ハード整備・ソフト創出を求められた本プロジェクト。そのプロセス・完成度を「奇跡」と称える人は少なくありません。評価委員のひとりである星野リゾートの星野佳路代表は「奇跡ついでに、もうひとつ奇跡を起こしていきましょう」と関係者にエールを送ります。専門的かつ長期的な視点で振り返りながら次へと進めるサポートが、外部評価委員会の役割と言えるでしょう。

~今月の立ち寄り~

直行便・西鉄高速バス「おとずれ号」誕生1周年キャンペーン

福岡市(天神・博多)と長門湯本温泉を結ぶ西鉄高速バス「おとずれ号」が、2023年7月1日に運行1周年を迎えます。これを記念して、「こども割」「グループ割」「そぞろ歩きっぷ割」というお得なキャンペーンを2023年8月31日まで実施、予約がスタートしました(詳細はサイトにて)。

筆者イチオシは「そぞろ歩きっぷ割」。往復乗車券に温泉街の飲食・温浴施設のクーポン3枚が付く「そぞろ歩きっぷ」は普段もかなり魅力的ですが、今回は25%オフの6000円。「こども割」は片道500円、グループ割は3名で1名無料になるなど破格の感謝価格。快適楽々「おとずれ号」で長門湯本温泉へぜひ!

写真提供> 長門湯本温泉まち株式会社、のかたあきこ

「長門湯本温泉と界 長門あゆみ」これまでの連載記事はこちらからどうぞ。