<第2回>「全国トップ10入りは夢物語ではない!」

1.全国86位の温泉地が“トップ10”を目指す

「全国温泉地ランキングで “トップ10”を目指しましょう。今は86位でも、長門湯本のよさを表現した温泉街をみなさんとつくることができたら、全国トップ10入りは決して夢物語ではないと考えます」。星野リゾート代表の星野佳路さんは2016年6月、「長門湯本温泉マスタープランの策定に関わる最終報告会」でこう話しはじめました。

目標達成に向けた整備計画として、〈温泉街再生に必要な6つの要素〉を提案。 ①外湯  ②食べ歩き ③文化体験 ④回遊性 ⑤絵になる場所 ⑥休み佇む空間 の拠点づくりを挙げました。これは全国の人気温泉地を調査して導きだした6要素で、長門湯本温泉は「自然を生かしながら魅力的な温泉街で人を集める」タイプの温泉地と位置づけ、そのよさを見直していくとの説明でした。

2.温泉街リノベーションのスケジュール

算定ではトップ10に向けての計画が達成された際、年間宿泊者数の換算は現状18万人から33万人と期待され(2031年目標)、経済波及効果は年間200億円見込める。そのためのスケジュール提案として、2019年までに駐車場・遊歩道などの整備、旅館開業を目標とし、2020年3月にマスタープランの全施設整備を終える流れが示されました。

「理想を語るのは簡単」「時間がなさすぎる」。驚きの声が、会場から次々あがりました。「温泉街リノベーションなんてふざけた考えだ」・・・。当時の長門市長・大西倉雄さんは、「トップ10には驚いた。しかしそれくらいの覚悟で挑まないと温泉街再生はできない。行政と地域のみなさんの協力が不可欠。具現化に向け検討したい」とコメントしています。

3.マスタープランの大きな役割とは?

トップ10という目標設定を、星野さんはこう語ります。「マスタープランの大きな役割は、まちづくりの成果を明確にすること。具体的な数値もそのためです。利害が異なる人たちが一つの計画に沿って活動するためには、わかりやすい目標が必要。みんなが憧れる将来像を設定・共有しないと、途中の道のりは大変だから嫌になってしまいます。」

このマスタープランをベースにして、長門市は2016年8月に〈長門湯本温泉観光まちづくり計画〉を策定。その計画をもとに若手の行政職員がまず動き、半年かけてプロジェクトの実働チームをつくりました。そして公民が一体となり、住民説明会や社会実験、デザイン会議、有識者参加の推進会議などを繰り返しながら、2018年度から工事がスタートしました。

4.目指す温泉街の姿を絵にしてみる

配置計画図を見ると、公衆浴場そばにあった駐車場は高台の国道沿いに移設され、新しい駐車場から温泉街までは象徴的な長い階段を新設。川には川床や飛び石などが描かれています。プロジェクトメンバーの金光弘志さんは「一部、理想を描いた」と振り返ります。「デザイン会議の司令塔・泉 英明さんはじめ、公民メンバーの物凄い実行力で、前例なきことが次々実現しました」と。

星野さんはこれを、「地元の若いみなさんがマスタープランという一つの目標に共感してくれたことが大きい」と話します。自身も2018年から年四回の推進会議など度々通いながら、全国温泉地ランキングトップ10を目指す取り組みを本格スタート。「星野リゾートもすてきな温泉旅館をつくって、しっかり集客していきます」と、決意を長門市で語っています。

次回は温泉街での魅力体験などをご紹介します。

~今月の立ち寄り~

「焼き鳥・さくら食堂」のランチ!

親子二代で「長州どり」の焼き鳥に情熱を燃やす、青村桜子さんのお店です。

風味よく、クセがなく、ジューシーな新鮮焼き鳥をぜひ。写真は刺し身も美味なランチ・さくら定食。 2020年3月、外湯・恩湯の対岸にリノベオープン!

写真提供>長門市、界 長門、のかたあきこ

「長門湯本温泉と界 長門あゆみ」これまでの連載記事はこちらからどうぞ。