研究者・教育関係者のお声
リゾナーレ大阪アトリエに寄せて
秋田 喜代美 氏(学習院大学)
ホテルで最も眺望のよい場所に子どものためのアトリエがある。その大きな窓から広がる大阪湾と青い空は新たな時代の借景である。その入り口から奥まで大阪の「ほんまもん」と職人技がこもったものの数々。子ども自らの試行錯誤を可能とする場としてのアトリエには専門家が子どもの語らぬ思いと声を聴こうとする静謐な時間が流れている。無駄のない美しさと制限や禁止をうまない環境づくり。そこは子どもも大人もものとの対話に浸り込む世界が保障されている。だから、訪れるたびに新たなときめきときらめきが生まれる場所への旅がそこにある。
中坪 史典 氏(広島大学)
リゾナーレ大阪Atelier――そこは非日常に浸ることのできる場所であった。安心してくつろげる落ち着いた色彩、アートの美しさと心地よさ、大阪湾を一望できる天空の窓に向かって自由に描画することのできる贅沢さと爽快さ。子どもたちは、誰もが興味津々に五感を働かせていた。そして大人たちは、多様なモノ(素材)と出会い、積極的にかかわる子どもたちの探究心に引き込まれていた。私もまた、彼彼女たちの心と身体が動く表現に魅了された時間であった。
野口 隆子 氏(東京家政大学)
大阪の空と海の境目で飛びながら泳ぐ笑顔の魚は、窓がキャンバスとなって描かれている。子どもが引き寄せられるようにやってきて、赤い糸巻を選んで慎重に手にとり、重さを感じている。絵具って粒みたいに落ちて溶けるんだと上から横から下からも眺められるプロジェクトルームのテーブル。夢中になって探究する子どもが手にとるものは、大阪の土地のもの、商業から生まれたものも含まれている。日常のものなのに、美しく置かれ、じっくりと丁寧に扱いたくなる非日常体験。…私もアトリエを通して「大阪」を再発見する旅をしました。
宮田 まり子 氏(白梅学園大学)
アトリエでは、最初の場所にお香の粉が置かれてあり、まずはその香りを聞きました。次に、ホテルがある街で育まれた品や自然物に触れ、総じてここが住まいとは異なる土地であること、旅の目的地にたどり着いたことを実感しました。光を感じたことも印象的で、ともすれば認識されないこの無形素材も、アトリエの環境との組み合わせにより感じることができました。あの場で確かに感じた光は、旅の大切な思い出の一つになりました。
野澤 祥子 氏(東京大学)
アトリエでは、大きなガラス窓から港を眺めることができます。誰かが窓に描いた大きな魚やエビは、煌めく海面から飛びあがったかのように景色と融合していました。アトリエリスタの方と小さな男の子の粘土を介したやりとりでは、身体や目線の動きがやわらかに響き合い、二人の対話が聴こえてくるようでした。丁寧に構成された空間で、外の風景や差し込む光を含め多様な物や人の間に生まれる豊かな出会いを、ゆったりと味わうことができました。
箕輪 潤子 氏(武蔵野大学)
どこまでも広がる海と空を背景にゆったりと流れる時間のなか、お子さんがひとつひとつのモノとじっくりと出会い、かかわる姿が印象的でした。アトリエリスタの方の「やってみる?」ではなく「調べてみたいですか?」という言葉や、粘土を小さく丸めてリズムよくお子さんの目線の先に転がす手の動きは、お子さんの心にやわらかく触れながら一緒に世界を探求していこうとされているように感じました。心がカラフルにも真っ白にもなるような、不思議な空間でした。
門田 理世氏|西南学院大学
明るい太陽が、大きな空が、緑の山が、青い海が、「ようこそ」と迎えてくれる空間が心に優しく響いてくる。そんなアトリエ全体に思慮深く散りばめられた環境に、目を輝かせてかかわる子ども達やその姿を愛しむように見つめる保護者からは幸せが充満していて、見ているこちらまで心優しくなってくる。「私たちが生きている世界は不思議がたくさんあるんだよ」と語りかけてくるこのアトリエは、人のあらゆる五感に触れるように設計されている。専門家たちのその思いを汲み取りながら日がな一日過ごしたいと思った。