<第6回>ゆずきち号で「移動中も楽しい」長門湯本温泉の旅
1.旅の思い出は五感の記憶とともに!
これから温泉地へ向かう。そのワクワクを盛り上げる観光列車「ゆずきち号」が、2021年7月に山口県で誕生しました。第一弾として昨年は、山陰本線新下関駅から長門市駅の約80㎞区間を結びました。山口県の伝統柑橘「長門ゆずきち」の香りが漂う車内で、日本海のパノラマビューを楽しむ列車旅。第二弾の今年は、新山口駅から長門湯本温泉へ向かう美祢(みね)線を走ります。
「移動中も非日常の体験をしてほしい」と、「ゆずきち号」は企画されたそうです。エリアマネジメント法人「長門湯本温泉まち株式会社」(長門市)と、星野リゾートと、JR西日本(西日本旅客鉄道株式会社)の3社がタッグを組みスタートしました。昨年の出発式(写真)では、長門湯本温泉まち株式会社の木村隼斗(きむら・よしと)マネージャーが、「公民が両輪で進めてきた温泉地づくりの列車に、強力な線路が備わった気持ちです」と挨拶しました。
2.「長門ゆずきち」尽くしの特別な旅
美祢線を走る今年は、沿線エリアをはじめ山口県の食材を使った軽食や「長門ゆずきち」スイーツを提供するほか、滞在中も温泉街で体験を実施します。例えば、橋の上で行われる「せせらぎアフタヌーンティ(往路者・復路者)」、農家での「長門ゆずきち」収穫体験(往路者)、長門ゆずきちコンフィチュール作り(復路者)など、産地・生産者と旅行者とが新たな形でつながります。「長門ゆずきち」は、かぼす・すだちの仲間。外見は濃い緑色で、まろやかな酸味と爽やかな香りで料理にあわせやすく、疲労回復も注目されています。
「せせらぎアフタヌーンティ」などで使われる萩焼の器は、山口県萩市の陶芸家・金子 司さんが「ゆずきち号」のために製作したものです。音信川(おとずれがわ)のせせらぎとともに提供される温泉街のスイーツも楽しみです。今年は車窓から眺める長門湯本温泉街の風景、山陰らしい赤瓦の家並み、山間の田園や清流のきらめきなどもご堪能ください。
3.山口県の周遊観光を盛り上げる観光列車
「ゆずきち号」は、長門市の長門湯本温泉が山口県の観光拠点になること、そして「全国温泉地ランキングTOP10」を目指す取り組みの一環であるとのこと。星野リゾートの星野佳路代表は、「公共交通は地域の応援団。交通機関との連携は、地域が成長していく上で非常に重要です。協力しあってお互いの力を高めながら、山口県の周遊観光を盛り上げていきたい」と期待します。
第一弾を企画したJR西日本・営業本部の成松香織さん(写真左)は、「普段はなかなか見られない海や山の色彩、おしゃれでかわいい萩焼、柑橘の癒し。鉄道が単なる移動手段ではなく、旅の一部分を担えることを嬉しく思います」と話します。
「ゆずきち号」乗車の旅行者からも、「のどかな車窓風景にとっても癒されました。柑橘系アロマの香りもいいし、萩焼も見ているだけで幸せだし、グルメも最高です!」と喜びの声が聞かれました。(写真は第一弾)。
4.すべてが楽しい長門湯本温泉の旅
第一弾の復路で停車した山陰本線阿川駅(下関市豊北町)も話題のスポットです。無人駅の阿川駅ですが2020年8月、開放感いっぱいのおしゃれカフェ「Agawa」がオープンして、人と食を結ぶ拠点になっています。山口県の食材を活かしたフードやドリンクが人気。機会があればぜひお立ち寄りください。
都市から離れた温泉地は、空港や鉄道駅からの二次交通の課題を抱えます。長門湯本温泉も同様。しかし地域内外の盛り上がりから、山口宇部空港や山陽新幹線新山口駅からの乗合タクシー、福岡市をはじめ都市発の高速バスなど続々誕生しています。「旅の途中も、滞在中も、帰宅してからも、長門湯本温泉の旅はすべてが楽しい。また訪れたい!」となるべく、関係者は頑張っています。
※「ゆずきち号」第二弾は、2022年10月14日・28日、11月18日・25日に実施。往路は新山口駅〜長門湯本駅(山陽本線・美祢線)、復路は仙崎駅〜厚狭駅(仙崎線・美祢線)。「ゆずきち号」の乗車券類は旅行商品として旅行会社(阪急交通社TEL0570-01—1789・日本旅行TEL0570-666-631)での販売となります。
~今月の立ち寄り~
萩焼&オリジナル土産「おとずれ堂」
竹林の階段すぐ、萩焼ミニギャラリー&土産店。築50年以上の日本家屋を、その歴史を知る住民参加の土間打ちワークショップなどを交えて改装。長門湯本温泉のロゴを使ったサコッシュをはじめ、長門生まれのグルメな土産物を販売。
萩焼ミニギャラリーは、店主であり温泉街の照明を監修した長町志穂さんのコレクション。番台を預かる赤川孝昭さんは、家族で「恩湯」を愛する地元案内人。2020年4月オープン。10時〜19時、火・水・木曜休/☎080・4026・3935
写真提供> 長門湯本温泉まち株式会社、界 長門、木下清隆
「長門湯本温泉と界 長門あゆみ」これまでの連載記事はこちらからどうぞ。