風呂キャン界隈より風呂界隈〜お風呂に入らない理由より、入りたくなる理由を〜

「風呂キャンセル界隈」という言葉、SNSで見かけたことはありませんか?お風呂に入ることを“キャンセル”、シャワーも入浴も「今日は面倒!」と感じてしまう人たちのことです。最近は、仲間や空気感を「界隈」と呼ぶのが流行りですよね。外出界隈、残業界隈・・そして“風呂キャン界隈”。

でもね、風呂キャンはもったいない! だってお風呂って、いいことしかないんです。体も心もすっきり、気分までキラキラ・・そんなお話、ここからはじめましょう。

のかたあきこ

旅ジャーナリスト・編集者

「町、ひと、温泉、宿」をテーマに30年、全国を旅しながら情報発信。テレビ東京「ソロモン流」で旅賢人と紹介される。温泉ソムリエアンバサダー、銭湯検定1級、サウナ・スパ管理士、日本茶インストラクターほか資格多数。著書に『温泉街リノベーション』『はじめまして、谷川岳』『手わざの日本旅〜温泉旅館「界」の楽しみ方〜』がある。

風呂キャン派は損!入浴の3つの効果

“風呂キャン派”の声を聞くと、「疲れているからもう寝たい」「明日の予定もないし」「冬は汗をかかないし」「光熱費がもったいない」など。なるほど、現代人らしい合理的な理由です。忙しさやコスパ重視もよくわかります。

でも、だからこそお風呂なのです。湯船に浸かって疲れが取れるのは気のせいではありません。入浴には3つの医学的メリットがあるのです。お湯の温かさで血流がよくなる「温熱効果」、体が軽くなってリラックスできる「浮力効果」、さらに水圧によってむくみを和らげる「静水圧効果」です。

入浴研究の第一人者・早坂信哉先生も「湯船に浸かることは医学的におすすめ」としています。湯に身を沈めて、思わずもれる「ふぅ〜」という声。これはリラックスの副交感神経が優位になった証拠で、心身ともに最高の回復タイムなのです。老廃物が排出され、肌は清潔につややかに。深い眠りと翌朝の快適な目覚めまで手に入ります。“風呂キャン”はやっぱりもったいない!

大きなお風呂の力

さらに嬉しいのが、広い湯船ならリラックス効果が増すということ。実験によれば、大きな浴槽で入浴した時の方が脳波のα波が多く現れると報告されています(*)。手足を思いっきり伸ばせる解放感。α波は心身が安定している時に出るもので、つまり広いお風呂はストレス解消にも力を発揮します。 (*参考文献:『銭湯検定公式テキスト2』早坂信哉監修)

浸かっている湯が「温泉」ならばどうでしょう。温泉はミネラルを含み、泉質ごとにさまざまな効能があります。というわけで、少々ハードルあげちゃいますが、広い湯船の温泉旅館へ出かけませんか?というお誘い、おすすめ二軒をご紹介します。

“温泉づくし”の「界 伊東」

温泉旅館「界」のお風呂自慢といえば、まずは静岡県伊東温泉の「界 伊東」です。ここは源泉を4本持ち、湧出量は毎分600ℓ。大浴場や露天風呂に源泉をかけ流すほか、プール、庭園の足湯、全30室の内湯と客室露天風呂(5室)、シャワーに至るまで、まさに温泉づくしの宿です。

広々した木造りの大浴場では、湯船からなみなみとあふれ出す温泉を楽しめます。泉質は塩や硫酸塩などが混ざったカルシウム・ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉。体のめぐりをよくして芯まで温まり、保湿も促してくれます。

“北海道遺産”の「界 ポロト」

もうひとつは北海道・白老町のポロト湖畔にある「界 ポロト」。ここで入れるのは、北海道遺産に選ばれている「モール温泉」です。植物由来の有機物を多く含む茶褐色の湯は、弱アルカリ性単純温泉。肌ざわりはトロリと優しく、湯上りはしっとりすべすべになります。

湖畔に三角屋根のモダンな湯小屋が立っていて、内湯続きの露天風呂の開放感は最高です(写真は男性用)。冬には結氷した湖を眺めならがの雪見風呂が格別。リラックスの「ふぅ〜」の声がたくさんでるはずです。

ご褒美の温泉旅行へ

旅館に泊まったら、お風呂はぜひ3回。到着後の明るい時間、星空がきれいな夜の時間、そして目覚めの朝風呂をぜひ楽しんでください。食後すぐの入浴は消化に負担をかけるので、1時間以上あけてからがおすすめですよ。

というわけで、風呂キャンはもったいない! 忙しい毎日だからこそ、お風呂に入ることは最高のリセット手段です。さらに大きな湯船、そして温泉旅館での体験は心とカラダをゆるめる最強のご褒美。さあ、次の休みは、どこで“ふぅ〜”しますか?

では次回も、ちょっとためになるお風呂コラム、“ちょっため界隈!?”でお会いしましょう!

ご紹介した温泉宿

界 伊東

温泉づくしに浸り、花暦を追う

湯量と泉質を誇る伊東温泉。源泉かけ流しの湯殿や源泉プール、足湯など贅沢に温泉を楽しむ宿です。温暖で一年中花が咲く伊東ならではの庭園を愛でながら過ごせます。

界 ポロト

ポロト湖畔 とんがり湯小屋の宿で過ごす

湖にせり出した、とんがり屋根の湯小屋が特徴的です。また、全ての客室が湖に面し、その広がりを眼前に感じることができます。まるでポロト湖の懐にひたるような一体感を感じる湯浴みが楽しめます。