全室に露天風呂がついた「界 玉造」で温泉と日本酒を浴びる

こんにちは、漫画家&文筆家の「やすこーん」です。「界 出雲」に続いて宿泊したのは「界 玉造」。こちらは玉造温泉街にある落ち着いた温泉宿です。

玉造温泉は日本最古の美肌の湯といわれています。また、島根県は日本酒発祥の地でもあります。こちらで歴史ある温泉と、たくさんの日本酒を堪能しました。

やすこーん

漫画家&文筆家

駅弁、駅そば、お酒、温泉を楽しむ「鉄道ひとり旅」が好き。 温泉ソムリエマスターで食べた駅弁の数は2500個以上。テレビやラジオでも活躍中。 最新刊は「ひとりで楽しむ鉄道旅 駅弁めぐり篇」(玄光社) 「イラストで読む!鉄道知識と旅の基本 鉄道イロハ」 (イカロス出版)yascorn.com

日本最古の湯と言われる玉造温泉

玉造温泉街はJR山陰線の玉造温泉駅からタクシーで5分ほど。タクシーは事前に予約しておきました。

玉造温泉は、一度来たことがあります。川沿いにずらりと大きな宿が並ぶ活気のある温泉街で、頻繁に音楽フェスなどお祭りをやっています。様々なホテルの浴衣を来た宿泊客が、それらを楽しみながら川沿いを歩いていました。私もそれに習って過ごし、大変よい印象を持っています。

「界 玉造」は黒く塗られた木の壁が際立つ、2階建てのこぢんまりとしたお宿。中庭を囲むように24室が配置されています。木々に囲まれて大変落ち着いた雰囲気です。周りに大きな建物が多いので、より一層そう感じます。

フロントから部屋に向かう際に、赤い「太鼓橋」を渡ります。まるで特別な世界への入口のよう。左右の一面のガラス窓から、お庭が見えます。

1階は回遊できるようになっており、廊下に沿ってぐるりと客室が配置されていました。フロントのちょうど反対側に大浴場、さらに進むとお食事処などがあり、またフロントに出ることができます。

案内されたお部屋は広くてびっくり! 日本酒の樽をテーブルに見立てたり、それに合わせて天井も樽のようなカーブになっていたりと、造りが大変凝っていました。全体に木が使われていて、やわらかい印象。木の香りも相まって、ゆったりと過ごすことができそうです。

全室に露天風呂がある客室

「界 玉造」は全室に露天風呂が備わっています。私の客室はヒノキの露天風呂でした。ほかに信楽焼の露天風呂もあるそうです。

この温泉は24時間、いつでも入ることができます。泉質は、ナトリウム、カルシウム、硫酸塩、塩化物泉で、美肌の湯として知られています。温泉の温度は41度。ゆったり浸かってピカピカの肌になろうと思います。

売店にはお部屋のお風呂に入れるための日本酒が販売されていました。さらにお酒を飲みながらお風呂に入ることができるセットも。これ、一度やってみたかったんですよね。お酒の香りに包まれて入る温泉は、最高に贅沢でした。

そして宿には茶室「蛙瞑庵(あめいあん)」があります。こちらで茶の湯体験をしました。お茶を立ててくださる「三斎流」(さんさいりゅう)の先生のお話を聞きながら、お抹茶とお茶菓子をいただきます。勾玉をかたどったお茶菓子がきれいで、食べるのがもったいなかったです。

玉造温泉街を歩いてみる

日が暮れる前に、川沿いの温泉街をお散歩。勾玉は、魔除けや幸運のお守りとして昔から作られてきました。この辺りは勾玉を作るための良質の赤めのう、青めのうがたくさん取れていたとか。そのことから、「玉造」という地名になったそう。

乗ってきたタクシーの運転手さんが、「あちらの山で、昔はめのうが取れていたんですよ」など説明してくださいました。

温泉街の一角に、源泉が湧いています。無人販売でボトルが売られているので、お金を入れてボトルを取り、そこに温泉を詰めて持ち帰りましょう。玉造温泉は「天然の化粧水」とも呼ばれているので、自分や友達へのお土産にもなりますよ。

日本酒発祥の地で楽しむ地酒

夕食を遅めの時間にしたので、宿に戻ったらまずは「日本酒BAR」へ。こちらは食前酒ということにします・笑

島根県は日本酒発祥の地と言われているだけあって、実に様々な日本酒があります。「界 玉造」には、日本酒に非常に詳しいスタッフさんがセレクトしてくれた、40種類以上の地酒が取り揃えられていました。 私は「日本酒3種(90ml)とおつまみ1種」のセットを頼みました。盃も3種類、自分で選べるのがうれしいです。

そしてお食事処へ向かいます。いただいたのは「しじみ牛しゃぶ会席」。先付けで出てきた雲の形のお皿がとても気に入りました。お料理そのものもですが、器や盛り付けの美しさも毎回期待してしまいます。

お酒は「日本酒ペアリングコース」があったので、迷わずそれを選びました。ちょっと日本酒を飲みすぎている気がしますが、いろいろと飲み比べると、味の違いが明確にわかって楽しいです。

玉造温泉のすぐそばにある宍道湖は、みなさまご存知の通り、しじみがとても有名。メインのしじみ牛しゃぶは、しじみのだし醤油に昆布などで出汁を作り、そこに牛肉をくぐらせます。お肉が出汁をまとって大変おいしい。締めがご飯でなくお蕎麦なのも、意外な組み合わせでよかったです。

迫力ある石見神楽

「界 玉造」も「界 出雲」と同様、ご当地楽「石見神楽」の演し物があります。同じ石見神楽でも、こちらは「ヤマタノオロチ伝説」をもとにしたお話で演目は「大蛇」。「界 出雲」とはまた違う内容で、存分に楽しめました。

特にヤマタノオロチの動きがすばらしく、口を開けた大蛇が、目の前にグワッと来られた時は、その迫力に驚きました。

聞くと、ヤマタノオロチの装具は竹と紙でできていて、長さ約16m、重さは20kgほどあるそう。それを自在に操っていたとは……! もちろんこちらも全員、「界 玉造」のスタッフさんたちが演じています。

さらに鹿児島県にある「界 霧島」でも神話にまつわるご当地楽が行われていて、「界 出雲」「界 玉造」「界 霧島」の順番に、話がつながっているそうです。そう聞くと、俄然、「界 霧島」にも行きたくなってきました。

全身が玉の肌になる温泉

翌日は、起きたらまず、現代湯治体操の「出雲酒造り体操」に参加しました。これはお酒造りをする蔵人の動きを取り入れた体操で、体がしっかり目覚めます。

その後、大浴場へ。内湯は周りがすべてガラス張りで、開放的です。温泉の泉質は同じですが、こちらの温度は40度。内湯の真ん中にお社があり、そこからお湯がこんこんと湧き出てきていました。なんだか拝みたくなりますね。

露天風呂は温泉の吹き出し口が滝のようになっていて、「ドドド」と落ちてくる音に癒やされます。緑を見ながら、長く浸かっていられるお湯でした。

さらに大浴場には「源泉パック」という顔パックができるサービスも。パックに温泉を染み込ませ、顔に当てて温泉に浸かると、顔にも体にもじわ〜っと温泉が染み込んでくるのがわかります。まさに「玉肌の湯」を体感しました。

しっかりお腹が空いたところで朝ごはん。鶏つくねの杜氏鍋をはじめ、焼き魚、湯葉の餡掛け、出汁巻き玉子などが並びます。

焼き魚は私の大好きなのどぐろ! 脂がのっていて大変おいしかったです。 地元の名物、赤天もありました。赤天とは魚のすり身に唐辛子を練り込み、パン粉をまぶして揚げた練り物。ご当地ならではの食材がさりげなく入っているのがうれしいです。

温泉、日本酒、そして勾玉。歴史を感じさせつつも、古びることなく活気を保ち続ける玉造温泉は、「気」の流れもよい場所でした。ぜひ出雲大社と合わせて、また来たいです。

ご紹介した温泉宿

界 玉造

いにしえの湯と出雲文化を遊ぶ宿

奈良時代から続く玉造温泉に佇む宿。全室露天風呂付の客室での湯浴み、日本海の幸、日本酒や茶の湯など、滞在を通して島根の文化に触れることができます。