地獄を眺めて天国に浸る
エントランスに一歩足を踏み入れると、眼前に広がるのは紛れもなく地獄。全面ガラス張りの大きな窓の向こうには、ひび割れた大地から真っ白い湯気がもくもくと立ち上っていました。いきなり地獄とのご対面です。
「雲仙地獄」は、この地域の代表的な観光名所。チェックインを済ませて部屋に入ってみると、もちろん全室地獄ビュー。まるで怪獣映画の特撮みたいな雰囲気でもあり、迫力満点です。「なんだこれは!」「爆発だ!」と岡本太郎のように叫ばずにはいられません。
窓の外が地獄である一方、室内は天国感に溢れています。教会のような、心洗われるステンドグラスのようなカラフルなパーテーション。長崎といえば大小無数に教会が立ち並び、キリシタンの歴史がある街です。
天井にはビードロを使用したポップな照明、玄関には波佐見焼のワンポイントオブジェなど、長崎の異国情緒な雰囲気と伝統工芸を散りばめた、この土地ならではのインテリアが素敵。お部屋のキーにもステンドグラスのキーホルダーが付いていてかわいいです。
今回泊まったご当地部屋「和華蘭の間」は、ゆったり浸かれる露天風呂と、防水の寝椅子が置かれて風呂上がりも広々寛げる「湯上がりスペース」がありました。
部屋の名称は「露天風呂付き客室」ではなく「客室付き露天風呂」!部屋全体が風呂を優先につくられています。露天風呂から見える景色は地獄。でもこちら側は天国オブ天国。天国と地獄が表裏一体。ウホウホした気持ちで地獄を眺め、まるでまんじゅう怖いの心境です。
温泉に入る前には「温泉いろは」という講座があり、この土地の温泉の歴史や泉質の特徴、身体に良い温泉の入り方などを専門のスタッフに教えてもらえます。雲仙は昔「温泉」と書いてウンゼンと読んだくらい、温泉と馴染みの深い地域だそう。
「界 雲仙」のまわりには徒歩で行ける気軽な地獄スポットがたくさんあり、大地から源泉の噴出するダイナミックな風景があちこちに広がっていて驚きます。ここでしか見られない驚異的な世界。
近くには温泉神社や温泉卵を売る店があり、うろちょろ散歩するだけでも楽しい。(カステラを作る菓子屋やお土産屋、角打ち付き酒屋などもあって意外と充実)
大浴場へも行ってみました。内湯の窓には大きなステンドグラスがあり、特に朝の光の中では、ガラスの優しい色彩が壁や湯船に投影され、その幻想的な様子にいつまでも眺めていたくなります。うっとりし過ぎて長湯には注意。
泉質は鉄や硫黄などを含むpH2.8の酸性泉で、日によって含有量が変化するため、湯の色が変わるそう。露天風呂は岩に囲まれたワイルドタイプで天気が良ければ夜には満点の星空を眺めることもできます。
