星野リゾート ここだけ話

#04 奥入瀬渓流ホテル

奥入瀬の自然を閉じ込めた、
ホテルオリジナルシードル
「OIRASE CIDRE」誕生まで

奥入瀬の自然を閉じ込めた、
ホテルオリジナルシードル
「OIRASE CIDRE」誕生まで

奥入瀬渓流ホテルの夏のイベント「せせらぎシードルガーデン」。渓流沿いのせせらぎデッキで、オリジナルシードル「OIRASE CIDRE」や、青森の醸造所でつくられた個性豊かな15種類のシードルを楽しめます。深緑とせせらぎに包まれながら味わう一杯のシードルは、夏の楽しみのひとつです。

今回はオリジナルシードル「OIRASE CIDRE」の誕生ストーリーをご紹介します。

せせらぎシードルガーデンの様子

発想の原点

「夏にせせらぎを感じながら味わえる、ここだけの一杯をつくりたい」。

きっかけは、2025年夏に提供するコンテンツを考える「魅力会議」で、せせらぎデッキでの夏の過ごし方を探っていた中で生まれました。

せせらぎデッキ

「夏といえば、ビールだけれども、青森だからこそ、ビールではなくシードルを使ったコンテンツにしてはどうか」、「どうせならホテルオリジナルのシードルを作れないか」という声から、「奥入瀬渓流の自然を感じられるシードル」、「奥入瀬渓流でも見られる植物を漬け込んだシードル」など、アイデアが次々と飛び出しました。

魅力会議の様子

中でも印象的だったのが、「奥入瀬の空気から酵母を採取できたら面白い」というアイデア。青森県内には、白神山地由来の天然酵母を使ったシードルの事例もあり、奥入瀬渓流ホテルオリジナルのシードルの制作へ期待が高まりました。

出会いと壁

プロジェクトメンバーが相談を持ちかけたのは、弘前市で摘果*りんごを使ったシードルを手がける「もりやま園」です。地域資源を活かしたものづくりをされていて、「奥入瀬の自然をシードルで表現したい」というホテルの想いにも共感してくれました。

*摘果:果樹栽培の管理法の1つで、品質の高い実を育てるために一部の余分な実を間引くこと

施設で温めてきた、ハーブや木の香りで夏の爽やかさを表現する案や、奥入瀬で採取した天然酵母を使う案を提案しましたが、酒税法の制約により、シードルにはハーブ、木材などの果実以外の原材料を使用できないため断念。また、奥入瀬渓流は国立公園の特別保護地区に指定されており、採取行為そのものが禁止されている上、仮に施設敷地内など採取可能な場所で酵母が採れたとしても、それが醸造に適しているか、発酵の安定性を確認するには長い時間が必要なため、今回の企画には間に合いませんでした。

こうして、ロマンと現実の狭間で検討を重ねた結果、「果実だけで奥入瀬らしさを表現する」という方向性が固まりました。

森を感じる果実との出合い

シードルを作るための制限がある中でも、「夏らしく爽やかで、自然の香りが感じられるシードルをつくりたい」という施設の想いは譲れませんでした。私たちからのある意味で無謀ともいえる打診に対し、もりやま園の方が提案してくれたのが、奥入瀬の森にも自生する「ヤマブドウ」と「ガマズミ」を合わせるアイディアです。

奥入瀬の森のガマズミとヤマブドウ

「ガマズミって、何ですか?」これが提案を聞いた際のホテルソムリエの率直な反応でした。 ガマズミは、落葉低木で春に白い小花を咲かせ、秋になると赤い実をぎっしり実らせます。その実は野性味あふれる酸味と香りが特徴的で、森の気配を感じさせます。

実際に果実を手に取り、香りや味を確かめるうちに、味づくりのイメージが膨らんでいきました。

理想を求めて、酸味と向き合う

試作第一号を飲んだもりやま園の製造担当の方の感想は「とにかく酸っぱい!」。しかし、この酸味こそが森の力強さだと捉え、甘さでごまかさず、活かしていくことに決めました。

瓶詰の様子

果実の個性と飲みやすさを両立するため、酸味、香り、アルコール度数の絶妙なバランスを探して、果汁の配合や発酵温度、酵母の種類を何度も見直しながら、試作を重ねました。

試行錯誤の末、遂に美しい淡いロゼ色の「OIRASE CIDRE」が完成。完成版を初めて試飲したホテルのソムリエは 「森や渓流を想起させるような果実の香り、ほどよい酸味、夏らしい淡いロゼカラーなど、まさに夏の奥入瀬にぴったりなシードルだと感じた」と振り返ります。

「OIRASE CIDRE」は、ヤマブドウやガマズミといった果実の個性が活かされており、食事との相性も抜群です。桃やぶどうを使った前菜、スモークサーモンと蕎麦粉のガレットなどと合わせれば、果実由来の酸味と香りが料理の味わいを引き立て、涼やかで心地よい余韻が広がります。

アルコール度数は約5%と軽やかな飲み口で、普段お酒を飲まれない方にも楽しんでもらうことができ、「お土産にして自宅でも味わってほしい」という造り手の想いも込められています。

滞在の一部をつくるという発想

もりやま園代表の森山さんは、ホテルとともに開発することの面白さと気づきをこう振り返ります。

「普段はここまで届ける相手を明確にイメージすることは少ないのですが、今回は奥入瀬渓流ホテルという、届ける場所・シーンや、味わうゲスト、ホテルの世界観をイメージしながら開発を進めることで、味づくりや表現の幅がぐっと広がりました。ゼロからホテルのスタッフと議論を重ねながら1本のシードルを形にしていくプロセスは、ものすごく刺激的で楽しかったです。」

出合えるのは、奥入瀬渓流ホテルだけ

「夏にせせらぎを感じながら味わえる、ここだけの一杯をつくりたい。」

そんな想いで始まったこのプロジェクト。奥入瀬渓流ホテルは、渓流の自然美に囲まれたこの場所でしか出合えない過ごし方を、季節やシーンを変えて今後も提案していきます。

「せせらぎシードル ガーデン」は2025年8月末まで開催。8月以降は、ホテルのSHOPや、フレンチレストラン「Sonore」夏メニューのデセールに合わせるドリンクとして引き続き提供します。

奥入瀬渓流ホテルでしか味わえない特別な一杯に、ぜひ出合いに奥入瀬渓流ホテルへお越しください。

奥入瀬渓流ホテル

唯一無二の渓流ステイ

奥入瀬渓流沿いに建つ唯一のリゾートホテル。渓流が目の前に広がる露天風呂や岡本太郎作の巨大暖炉が印象的なロビーが癒しの空間を醸し出します。「渓流スローライフ」をコンセプトに心から満たされる滞在を演出します。

2025.08.12 更新
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