白い闇に包まれる、冬の奥入瀬渓流
春の鮮やかな新緑、夏の青々とした苔、そして秋を彩る紅葉。青森県十和田市に位置する「奥入瀬渓流」は、日本の自然美を代表する景勝地として、毎年多くの観光客を魅了しています。しかし、かつてその客足は秋の終わりとともにピタリと途絶えていました。冬が訪れると、周辺の観光施設は一斉に扉を閉ざし、路線バスも運休します。積雪はあるもののスキーリゾートではないこの地は「冬にわざわざ訪れる理由のない場所」として完全に忘れ去られていました。
奥入瀬渓流ホテルも例外ではありませんでした。2008年以降、ホテルは毎年長い冬季休業に入っていたのです。秋の営業が終わると、スタッフは冬の間にスキー客でにぎわうトマムなど、全国のグループ施設へ異動していました。地元採用のスタッフも多く、年に4〜5か月、家族と離れて暮らさなければならない生活は、心理的にも大きな負担となっていました。「奥入瀬で年間を通じて働ける環境を作りたい」——それはホテルにとっても、スタッフにとっても長年の切実な課題でした。
