雪や氷が織りなすさまざまな姿を堪能する「奥入瀬渓流ホテル」

2017年に冬季の営業を再開し、冬の奥入瀬の魅力を発信し続けている「奥入瀬渓流ホテル」。十和田湖から流れ出す奥入瀬川のうち、流出口の子ノ口からホテルのある焼山までの約14kmが奥入瀬渓流と呼ばれ、その畔に建つ唯一のホテルです。

奥入瀬渓流はミシュラングリーンガイドで二つ星に選ばれ、ベストシーズンは5月〜6月の新緑の頃と言われる場所。でも冬季の開業を始めてからは、その人気が夏に迫っている様子。なぜなら「奥入瀬の本当の魅力は雪のシーズンにあり!」と言われているから。そこで“緑が雪に覆われちゃっている奥入瀬ってどうなのよ?”と多くの人々の疑問を確かめるべく、冬の奥入瀬へと向かいました。

今井 恵

エディター&ライター

雑誌『ku:nel』のスタッフエディターをはじめ、雑誌、書籍、WEB、カタログで美容、旅、人物インタビューのページなど幅広く執筆。旅が何よりのストレスを解消で、どこでも眠れるのが特技。趣味は韓国ミュージカルやバレエを観ること。そして猫をお腹に抱えて寝るのが幸せ。Instagram:@megumomi

自然が生む、雪の絵画や氷の彫刻

エントランスが昨年リニューアルされ、炎がゆらめく屋外のファイヤープレイスが誕生。よりスノーリゾート感が高まりました。 もちろん奥入瀬渓流ホテルはスキー客も利用するので、寒い中を帰ってきてこの炎のゆらぎが目に入るのは、なんとも優雅で贅沢なことなのでしょう。

東館の「ロビー 森の神話」、そして西館の「渓流-BASE」にはホテルの象徴でもある岡本太郎作の大暖炉が守護神のごとく雄大な姿を披露しています。どちらも暖炉の向こうにある大きな窓一面には雪景色が広がり、思わず息を呑む美しさ。緑の季節とはまた違う迫力に、美術館で名画を前にしたような高揚感を感じ、これが冬の奥入瀬の魅力なのかと、しばし動けませんでした。

奥入瀬の冬といえば、自然が作り出した氷の芸術と呼ばれる“氷瀑”が名物です。氷瀑とは寒さで滝や湧水が凍りついたもの。奥入瀬渓流には14本の滝があり、それぞれに氷の壁や柱、幾重にも連なるつららが生まれ、巨大な彫刻のようなアートを作り出しています。

それをホテルの露天風呂の周りに人工的に作り、冬限定の「氷瀑の湯」にしたというのが、奥入瀬渓流ホテルの冬の試みです。わざわざ滝まで足を運ばずとも、湯船に浸かりながら眺められるのだから、これほど贅沢なことはありません。

氷瀑の湯のおすすめタイムはやはり夜。内湯からドアを開け、寒さの中つま先立ちで屋外の露天に向かうと、渓流の水音が響く中にライトアップされた氷瀑に「おおっ」と思わず声をあげてしまう。スタッフ考案のこの氷瀑の湯は、毎年12月上旬になると壁に霧状の水を吹きつけ、時間をかけて高さ3.5m、幅16mの氷瀑を作っていくのだそう。そこからさらに冬が厳しくなると雪が積もり、凍った水飛沫が重なり、氷瀑は日々表情を変えていきます。

お湯はpH8.5以上の単純泉なので、とにかく肌あたりが柔らかい。首から上が涼しいせいか、氷瀑を眺めるのが楽しいせいか、うっかり長湯をしてしまい、気づいたら頭の上に雪が積もっていました。お湯から上がると肌はつるっと滑らかで、目に麗し、肌に優しい極上のお湯でした。

滞在して知る、青森の食文化や渓流の魅力

奥入瀬渓流ホテルにはふたつのスイートルームがあり、そのうちのひとつ「渓流スイートルーム」は最大6名が泊まれる120平米の広さを持つラグジュアリールーム。ベッドルームがふたつあり、女子旅や家族旅、さらにホテル探しに苦労する3世代旅にもぴったりなデザイン。

渓流を見下ろしながら入れる客室温泉は横に贅沢なコンサバトリーを備え、大きなダイニングテーブルやコの字型のソファセット、カウンター付きの簡易キッチンも。

この部屋で贅沢なのは空間だけではありません。普段はレストランのみで提供する、Sonoreのソムリエが厳選した約150種のワインの中から、特別にセレクトした数種類を部屋で堪能できます。

さらに朝はこの客室限定の特別朝食が提供されます。この日は新鮮な野菜たっぷりのスモーブローや熱々の帆立貝のクラムチャウダーなど盛りだくさん。特別な部屋なのだからたくさんのご褒美を楽しんでしまおう。そんな贅沢が許される特別客室なのです。

夕食は食通の間でも話題となっているフレンチレストラン「Sonore(ソノール)」へ。アペリティフは雪景色の渓流沿いのテラスで。この日は終日雪が降りしきり、テーブル上は拭いても拭いてもすぐに雪が積もりましたが、テラスにはヒーターも膝掛けもあり、かなり快適。

かまくらのようなドーム型の席で、銀世界の中、渓流のせせらぎを聞きながらシャンパーニュと手で口に運べる、一口サイズのアペリティフを5種ほど堪能。ちょうどほろ酔いになった頃、室内のダイニングに移動してコース料理がスタートします。

Sonoreの冬限定ディナーコースは、旬のマグロや帆立貝など青森の冬の味覚をふんだんに使い、郷土料理“じゃっぱ汁”の技法をアレンジしてフレンチ仕立てにした一品などが続きます。絶妙な火入れでホタテはぷるん、甘鯛の皮や鴨の皮目はサクっ、パリッと食感が楽しめ、ストーリーあり、ワインとのマリアージュも楽しめる五感を刺激する料理。

じゃっぱ汁から発想を得た鱈の出汁やスパイスに白子を合わせたクリーミーなソースの上に、サクサクの皮が香ばしい甘鯛のうろこ焼きを。

さらにパン好きの女性たちがたまらないであろう、南部鉄器で焼き上げたバターたっぷりのブリオッシュ風のパン。周りの食いしん坊仲間から聞く「奥入瀬のSonoreがすごい」の評判に大きく頷ける大満足のコースでした。

奥入瀬の自然に直に触れる

奥入瀬渓流ホテルにはいくつものアクティビティが用意されています。緑の季節にはルーペを片手に渓流沿いの苔を観察しながら歩く「苔さんぽ」が大人気。それまではまったく関心のなかった苔ですが、ルーペでのぞくと小さな葉っぱの形状のもの、お花のような形のもの、いろいろあって本当にかわいい!その日以来、すっかりモス・ウォッチャーとなってしまった私。いったい何人に苔さんぽを勧めたことでしょう。

それに変わる冬のアクティビティといえば、夜の「氷瀑ライトアップツアー」があります。「氷瀑ライトアップツアー」はライトアップされた奥入瀬渓流の氷瀑をバスで見にいくツアー。真っ暗闇の中、このツアーのゲストのためだけにライトアップされる氷瀑。その迫力ある姿は、プロジェクションマッピングか!? と見まごうばかりに幻想的です。氷瀑をバックに撮った自分の写真は、まるで「アナと雪の女王」の世界に!?

こけ玉作りは奥入瀬の自然を学びながら手を動かせる、女性や子供におすすめしたいアクティビティです。こけ玉とは植物の根を土で丸く包み、こけを貼り付けて糸で固定した人気のインテリアグリーン。奥入瀬渓流に生息するシダ、カエデ、ブナなどから好みの植物を選び、出来上がったこけ玉は持ち帰れるのです。旅を終えたあとも、部屋の中でこけ玉に水を与えながら奥入瀬の自然を思い出せる貴重なお土産になります。

奥入瀬渓流ホテルへの初訪問は仕事で訪れた緑豊かな季節。初めて見る渓流と緑の美しさの虜となり、すぐさま夏の家族旅行の行き先に選んだこのホテル。でも冬のこの美しさを知ってしまったからには、これを周りの旅好きの家族や友人に知らせないわけにはいきません。

苔むした岩が雪の綿帽子を被り、川の中に点在する姿は、そのかわいさに胸がキュンとなったほど。よーく見るとつららのヒゲが生えているものも。

奥入瀬の綿帽子をぜひ多くの人に見てほしい! 奥入瀬の良さは雪の季節にあり! この言葉を存分に納得させてくれる冬の奥入瀬渓流ホテルでの滞在。ホテルのあちこちに点在する唯一無二を探しに、ぜひ冬の奥入瀬へ。

ご紹介した温泉宿

奥入瀬渓流ホテル

唯一無二の渓流ステイ

奥入瀬渓流沿いに建つ唯一のリゾートホテル。渓流が目の前に広がる露天風呂や岡本太郎作の巨大暖炉が印象的なロビーが癒しの空間を醸し出します。「渓流スローライフ」をコンセプトに心から満たされる滞在を演出します。