星野リゾート ここだけ話
#01 青森屋
どうしてもサウナにねぶたを入れたい。青森屋が挑戦した「青森ねぶたサウナ」の誕生秘話
どうしてもサウナにねぶたを入れたい。青森屋が挑戦した「青森ねぶたサウナ」の誕生秘話
星野リゾートでは、その地で暮らしているからこそ分かる魅力を、スタッフ自身が感じ、チームで磨き、伝えていく「独自の魅力づくり」を行っています。「星野リゾート ここだけ話」と題し、その魅力づくりの誕生ストーリーや開発背景をご紹介します。
青森県三沢市にある温泉宿「星野リゾート 青森屋」は、「のれそれ*1青森 ~ひとものがたり~」のコンセプトのもと、祭りや温泉、方言、食などの様々な青森文化を楽しく体験してもらい、青森のファンになってもらうために、これまでたくさんのコンテンツを提供してきました。
2024年4月3日には、祭りをテーマにしたコンセプトサウナ「青森ねぶたサウナ」が誕生。数々の課題を乗り越えて実現した、その誕生ストーリーをご紹介します。
*1 青森の方言で目一杯の意味
■スタッフの声からうまれた「青森ねぶたサウナ」
星野リゾートでは、提供するコンテンツを「魅力」と呼び、入社歴にかかわらず誰でも参加できる「魅力会議」を行い、ざっくばらんに意見を出し合って議論を重ねることで、様々なコンテンツを形にしています。今では青森屋の名物となった「青森ねぶたの間」や「ねぶた雪灯り」も、「雪とねぶたのコラボレーションが観たい」「ねぶたまみれの寝かせない客室を作りたい」というスタッフの声から生まれました。
1枚目:青森ねぶたの間、2枚目:ねぶた雪灯り
そんな青森屋には、老朽化によりしばらく眠っていたサウナがありました。以前から「サウナが復活してほしい」「サウナがあれば良いのに」というお客様の声も多く、その声に応えるべく2022年9月に行われた魅力会議にて、「青森でしか体験できないユニークなサウナを作りたい」という意見が出たのが、「青森ねぶたサウナ」誕生のきっかけでした。すぐに、世の中に存在しないサウナを作ろうと、プロジェクトチームが動きだしました。
■「じゃわめぐ」サウナが作りたいという情熱
プロジェクトチームのメンバーは年齢も性別も入社歴も様々でしたが、「世の中に存在しないサウナを作りたい」という情熱は皆同じでした。とはいえ、サウナに関する知識も持ち合わせていなかったため、まずはサウナの競合他社について徹底的に調べたり、実際に足を運んで視察したりして、青森屋がどのようなサウナを目指すべきかを考えることから始めました。
最初はおしゃれな方向性も案に挙がりましたが、青森屋の「のれそれ青森 ~ひとものがたり」というコンセプトの体現のため、青森らしさ全開のサウナへと舵を切りました。
「まるで本当の青森ねぶた祭に参加しているかのようなじゃわめぎ*2を感じられるよう、青森ねぶた祭の熱気とサウナの熱気を掛け合わせたい」という気持ちがプロジェクトメンバー内で一致し、世界でもまだ例のない「祭りをテーマにしたコンセプトサウナ」を作ることに決定しました。
*2 青森の方言で血が騒ぐという意味
サウナのノウハウは無かったものの、「ねぶた×〇〇」という数々のユニークな企画を行ってきた経験を生かし、高温多湿のサウナの中に紙を入れるというもはやタブーともいえる「ねぶた×サウナ」を実現させようと計画を進めていきました。
魅力会議の様子
■構想から制作へ。「ねぶた×サウナ」の実現
まず「ねぶた」をどうするか。これは、これまで何度も青森屋オリジナルで様々なねぶたを制作していただいている、第七代ねぶた名人、竹浪比呂央氏率いる「竹浪比呂央ねぶた研究所」に制作を依頼することにしました。
ねぶた×サウナという初めての試みに対し、竹浪氏は「サウナにねぶたを入れるのは非常にチャレンジングだが、ワクワクする」と、前向きにオファーを受けてくれました。この前代未聞のチャレンジには、ねぶたがサウナの熱に耐えられるのか、限られた空間でどこまでねぶたの迫力を表現できるか、という二つの課題がありました。
耐熱の課題は、ねぶたを耐熱ガラスに入れることで対応しました。そして、ガラスの中の限られた空間で最大限の迫力を出すために、半立体という特殊な形で作っていただくことになりました。こうして、サウナの熱にも負けない迫力満点のねぶたが完成!題材は、「龍王」という⻘森ねぶた祭でもよく用いられる水や雨を司る神様です。
1~2枚目:ねぶたの制作風景、3枚目:半立体的なねぶた
サウナ室へ搬入する際に、耐熱ガラスに収まるか心配になるほど大きく迫力満点のねぶた
サウナにねぶたを設置するだけでは終わりません。サウナマットやサウナストーン、12分計など、サウナ空間の細部にまでとことんこだわりました。制作してくれる業者探しから始め、サンプルを頼むということを繰り返した末、オリジナルのグッズが完成。
サウナマットは、山車に用いられる津軽藩の家紋である牡丹の花をデザイン。その耐久性を確かめるために、マットのサンプルを地元の温泉に持っていって実際に使用感などを試したりもしました。12分計は、祭りの盛り上げ役「跳人(はねと)」が跳ねまわるデザインを実現しました。
サウナストーンやサウナハット
さらなるこだわりは、⻘森ねぶた祭さながらの熱気を体感してもらうべく、祭囃子(まつりばやし)の盛り上がりに合わせたオートロウリュの演出。音響業者との音源選びから、祭囃子の盛り上がりでどれくらいボリュームを上げるのか、どのタイミングでオートロウリュを発生させるかなど、収録スタジオに足を運び、細かい部分に至るまで打ち合わせを重ねました。
■ついに完成した「青森ねぶたサウナ」。お客様からの声が達成感に
構想から約1年、サウナに関して右も左も分からない状態から様々な壁を乗り越え、ついに2024年4月3日、青森ねぶたサウナがオープンしました。
体験したお客様からは「ねぶたをじっくり見ながらゆっくりサウナに入っていられた」「普段サウナは苦手で入らないけど青森ねぶたサウナは楽しかった」といううれしい声をいただきました。こだわりの一つ一つに気付き、楽しんでくださる様子を見て、ようやく大きな達成感を得ることができました。
■これからの青森ねぶたサウナと星野リゾート 青森屋
青森ねぶたサウナをたくさんの人に体験していただき、サウナと青森ねぶた祭の熱気を肌で感じて、ととのって、活力を得てもらえるような、愛されるサウナになって欲しいと考えています。今後はさらに、青森だからこそ体験できるサウナ滞在を提案できるようより進化させ、サウナの前後のコンテンツも充実させていく予定です。
今回の青森ねぶたサウナに限らず、青森の魅力を伝え続けるには地域の皆様のご協力無しでは成り立ちません。地域の皆様のご協力に感謝をしながら、今後も青森の伝統や文化を楽しく体験していただけるコンテンツを作り続け、青森のファンになってもらえるきっかけになる場所を目指していきます。
青森屋
「のれそれ(*青森の方言で目一杯の意味)青森 ~ひとものがたり~」をコンセプトに、青森の祭りや方言などの 文化を満喫できる温泉宿。約 22 万坪の敷地内には、池や古民家が点在する公園もあり、食事や多彩なアクティビティを楽しむことができます。