「甘さ×旨味」の可能性を信じて
- 昆布ティラミス誕生の裏側 -
函館の朝食激戦区に生まれた、昆布づくしの朝食
函館は、全国でも屈指の「朝食激戦区」として知られる街です。いくら・海鮮の食べ放題や北海道食材を使ったブッフェで名を馳せる有名ホテルが立ち並ぶなか、「OMO5函館 by 星野リゾート」は2026年3月21日から5月31日の期間、まったく異なる勝負を仕掛けます。
テーマは「昆布」。 生産量・生産額ともに日本一を誇る函館真昆布に焦点を当てた朝食ブッフェ「目覚めのこんぶッフェ」です。
昆布出汁を使ったアクアパッツァや昆布締め寿司、こぶレーゼなど全10品の昆布料理に加え、函館真昆布・利尻昆布・羅臼昆布を飲み比べる「3種のおめざめ昆布出汁」、そして地元の昆布専門店「かまだ商店」の職人によるおぼろ昆布削りのライブパフォーマンスもご用意しています。天井には全長9mの昆布オブジェが広がり、まるで昆布の海の中にいるような空間で、函館の昆布文化をまるごと体験していただける朝食です。
その中でも、ひときわ異彩を放つメニューがあります。
それが「昆布ティラミス」です。
昆布とティラミス。一見、接点のない組み合わせを成立させるまでに、OMO5函館 料飲担当の松元賢太はいくつもの失敗を重ねました。
「1回目は昆布の旨味が全然感じられなくて。2回目は甘さと塩辛さが完全に分離してしまって、大失敗でした」
松元はそう振り返ります。失敗のたびに、なぜうまくいかなかったのかを丁寧に考え続け、その先に「甘さと旨味の一体感」が生まれました。
テーマパーク、高級レストラン、そして星野リゾートへ
松元のキャリアは、千葉にある某テーマパークから始まりました。パーク内にある飲食店で働きながらソムリエの資格勉強をし、その後は都内の高級レストランで研鑽を積みながら料理への理解を深めました。
「今の自分を形成するうえで、料理とワインの世界にじっくりと向き合う大切な時間でした。」
そんな中で、星野リゾートへの入社を決めたのは、「料理を通じて地域の魅力を伝えたい」という思いと、北海道ワインへの関心からでした。 最初の配属先はリゾナーレトマムのイタリアンレストラン「OTTO SETTE TOMAMU」。サービス担当としてこれまでの培ってきた経験をもとにお客様へのサービスに活かしてききました。働くなかで、ソムリエとして料理人と同じ水準の知識を持つ必要を感じ、料理への理解もさらに深めていきました。
その後、OMO5函館の開業メンバーとして異動することになります。最初は施設内にあるOMOカフェ&バルを任され、約1年後には施設全体の料飲に関するとりまとめのポジションに就きました。ダイニング全体を見渡しながら、メニューの考案からサービスオペレーションの構築まで、食の現場を広く担うようになりました。
「昆布だけを深掘りした経験は、それまでなかったんです」
「目覚めのこんぶッフェ」の取り組みへの参加は、企画がある程度固まった段階で声がかかりました。
「昆布を使った朝食メニューを作ってほしい」
そう依頼されたとき、松元の反応は前向きなものでした。
「昆布やその旨味は日本人にとって馴染み深いものですし、取り組むことへの不安より楽しみの方が大きかったです。ただ、昆布だけにここまで焦点を当てて深掘りした経験は、それまで一度もなくて。だからこそ、やってみたいと思いました」。
OMOのスタッフは「街をこよなく愛するスタッフ」と言われます。松元にとって昆布という素材を通じて「街を愛するきっかけ」が少しずつ姿を現し始めました。
みたらし団子から生まれた「甘さ×旨味」という着想
昆布ティラミスは、最初から予定にあったメニューではありませんでした。ブッフェメニューのラインナップには「王道の昆布の美味しさはもちろんだけど、新しさや面白さが欲しい」という声から、開発が始まっています。
アイデアのヒントになったのは、和食の世界にある「甘さ×旨味」の組み合わせです。みたらし団子がその典型で、甘いタレの中に醤油の旨味が溶け込むことで、どちらか一方では出せない奥行きが生まれます。
「この組み合わせを、ティラミスという形で表現できないか」
そのアイデアを少しずつ形にしていきました。
2度の失敗の先に、3度目の正直がありました
1回目の試食会では、
「普通に美味しいティラミスですね」
昆布を使っているはずなのに、旨味がどこにも感じられません。昆布の存在が、料理の中に溶け込まずに消えてしまっていました。
前回を踏まえ2回目は、より昆布感を強く出そうとしました。
そのためにティラミスの上にかけるキャラメルソースに液体の昆布出汁を合わせる手法を試みましたが、結果は「大失敗」。
甘さと塩辛さがそれぞれ独立して主張し合い、口の中でひとつにまとまりませんでした。
「一体感がまったくなかったんです。甘さと塩辛さが別々に存在している状態で、これは違うと思いました」と松元は当時を振り返ります。
2回の失敗を経て、松元はゼロベースでティラミスという料理の構造そのものを見つめ直しました。甘さと旨味が「戦う」のではなく「溶け合う」ためには何が必要か。その問いをひとつひとつ丁寧に考えていきました。
同僚との会話中に、答えが降りてきました
解決策のひらめきは、同僚との相談中に訪れました。
「マスカルポーネクリームそのものに、昆布の旨味を加えたらどうか」
ソースや出汁という「外側」から昆布を加えるのではなく、ティラミスを構成するうえでの核心であり、ティアラミスの甘さを担うマスカルポーネクリームの中に昆布の旨味をあらかじめ溶け込ませてしまう。甘さと旨味を、最初から一体にしてしまう発想でした。
3回目の試食会では、何度も分量を微調整しながらそのアイデアを実行しました。
そして試食会当日。
口にした瞬間、チームの空気が変わりました。
まろやかなクリームの甘さの奥に、昆布の旨味がじんわりと広がっていきます。甘さが旨味を引き立て、旨味が甘さに深みを与える。みたらし団子で直感した「甘さ×旨味」の世界が、ティラミスの中でようやく実現した瞬間でした。
函館の魅力が、松元を変えた
昆布ティラミスの開発と並行して、松元は「3種のおめざめ昆布出汁」の実現にも着手しました。函館真昆布・利尻昆布・羅臼昆布、それぞれの旨味や香りをシンプルに味わう出汁の飲み比べです。各昆布の個性と向き合うなかで、昆布への理解は少しずつ別の次元へと入っていきました。
「函館真昆布は、主張しすぎないけれど、しっかり旨味が乗っている。利尻は繊細で雑味が少なくて、羅臼は香りが強くて存在感があります。同じ昆布でも、こんなに違うのかと驚きました」。和食の料理人が昆布にこだわる理由が、ようやく腑に落ちたと松元は話します。
変化は仕事の場だけにとどまりませんでした。プライベートでも昆布を食べる頻度が増え、自分で出汁を引くようになった松元は、ある感覚に気づいたと言います。「出汁を取った後の昆布を捨てるのが、もったいなくて。昆布をなりわいとしている方々の熱意に触れてきたからこそ、全部使い切りたいという気持ちが自然と生まれてきたんだと思います」
千葉出身で、北海道とは縁もゆかりもなかった松元が、今では昆布の声に静かに耳を傾けています。函館という街が、彼を変えていました。
スタッフが街に目覚めるなら、ゲストも街の魅力に目覚めさせられる
OMO5函館が目指しているのは、「思いもよらない街の魅力に出会い、知らず知らずのうちにその街までお気に入りになってしまう」体験です。
その体験は、ゲストだけが感じるものではありません。街をこよなく愛するスタッフが、自分自身で街に変えられていくプロセスが、そのままゲストへの滞在体験の源泉になっていると信じています。
松元は、ゲストにこう感じてほしいと話します。
「昆布を意識すると、味がワンランク上がることを感じてもらえたら嬉しいです。定番メニューでも想像以上においしくなっているところや、昆布という素材の新しい可能性を、朝食の場でぜひ発見してみてください」。
函館の昆布に、まず目覚めたのはスタッフでした。その熱量が朝食のテーブルに込められているからこそ、ゲストも函館の朝に、昆布の奥深い魅力に目覚めることができるー「目覚めのこんぶッフェ」という名前には、そんな”目覚め”の連鎖への願いが込められています。
OMO5函館
日本屈指の夜景や海鮮、朝市、異国情緒漂う町並みと魅力が揃うリピート必須の街。だからこそ楽々移動できるOMO専用バスが大活躍。源泉かけ流しの温泉に浸り、ファイヤープレイスの炎を眺めて湯涼み。5種の海鮮朝食を味わい、プロ御用達の市場でお土産選びをすれば100%の王道魅力にとどまらない、120%の大満足。